2022年11月23日

【報告文】第114回 VIDEO ACT! 上映会〜東京五輪と野宿生活者の強制排除〜

上映作品
『竪川に生きる』 監督:山本容子


 10年前の2012年、江東区の竪川河川敷公園で生活する野宿者たちを強制排除する行政代執行が企てられたことをご存知だろうか? 野宿生活者たちはフェンスで囲まれた公園の10メートル程外側、行政代執行対象区域とは認められない場所で、新たな生活を始めた。今回上映した『竪川に生きる』は、その生活を活き活きと、そして丹念に描き出す。

 現在パリ在住の山本容子監督は、当時、公園の近所に住んでいたという。そして、山谷の日雇い労働者を描いた映画『山谷─やられたらやりかえせ』を観たことをきっかけにして、竪川と出会う。日本での生きづらさを感じていた山本監督は、竪川に魅かれる。その目に映ったのは、「自分たちの手で、自分たちの生きる場所をつくる姿」だった。

 『竪川に生きる』を観る私もまた、山本監督のカメラを通して、そこで生きる人たちの姿に心を動かされた。そこには、「人が人を思いやる」というシンプルで力強い人間らしさがあったからだ。アルミ缶収集で出会った近隣住民とのやりとり、区役所の職員を説き伏せる老練な言葉遣い、回収箱を設置して集まった毛布を仲間に配って共に助け合う姿、通勤客が行き交う道の雪をかき、近所の商店の人から差し入れられる温かい食べ物、テント村に共同で設置した郵便ポストに届く年賀状…まるで、映画『男はつらいよ』の寅さんとその周りの人たちが、そこにいるようだった。

 上映後、山本監督がいるパリと約35名が集まった上映会場の飯田橋をリモートで繋いだ。そして、ご参加頂いた映画の主人公の郡司さんとまっちゃんが、モニターを通じて山本監督と再会した。感動的だった。寅さん、ではなく、郡司さんが言う。「俺、涙出ちゃったよ! こうやって記録に残すことは大事。あったことは、あったこと。みんなに観てもらっただけで嬉しい」。

 観た私たちには、何ができる? 野宿生活者の強制排除は、竪川だけでなく、これまで何度もあちこちで行われてきた。上映後のディスカッションでは、現在、まさに排除が行われようとしている渋谷区美竹公園の現状を支援者に報告して頂いた。美竹公園には、2017年に封鎖された宮下公園から移り住んだ方もおられるという。

 再開発の加速によって、「人が人を思いやる」人間らしさが失われ、生きづらい社会が広がっていく。しかし、その暴挙をはね返すのもまた、「人が人を思いやる」人間の底力なのだ。
(土屋 豊)

※渋谷区美竹公園の現状については、下記「ねる会議」のHPをご覧下さい。
http://minnanokouenn.blogspot.com/

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2022年11月17日

第114回 VIDEO ACT! 上映会 〜東京五輪と野宿生活者の強制排除〜 上映作品『竪川に生きる』

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■ 第114回 VIDEO ACT! 上映会 〜東京五輪と野宿生活者の強制排除〜
上映作品『竪川に生きる』
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2022年11月17日(木) 18時30分より

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時は2012年10月。
2020年夏季開催予定のオリンピック、東京招致が決定する1年前。
東京都江東区竪川河川敷公園では、野宿生活者への強制排除が行われた。
東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件が次々と明るみになる中、
野宿生活者の視点から、東京の街を見つめてみませんか。

■上映作品
『竪川に生きる』(2021年/100分)
監督・編集・撮影:山本容子

■作品解説
2020年夏季オリンピックの東京招致が決定する1年前の 2012 年10月、
東京都江東区竪川河川敷公園では、 区役所による野宿生活者への強制排除が行われていた。
都内のある映画館で東京・山谷を舞台にした日雇い労働者の
ドキュメンタリー作品を見に行った私(山本容子監督)は、
竪川河川敷公園で生活する男性と出会った。
「生活保護はとらないのですか」と質問すると、
男性は「アルミ缶収集で生活をしています。
よかったら私が住んで いる場所を見に来てください」と言った。
翌日、私は公園を訪れた。
そして2012年12月5日、江東区が公園での行政代執行を試みた日から、
私は彼らの生活を記録に残すために映像を撮り始めた。

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■日時
2022年11月17日(木)
18時15分/開場 18時30分/開始
<ご注意>通常より、上映開始時間が早まります!
上映後、監督の山本容子さんをオンラインで迎え、トーク&ディスカッション有。

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分

■参加費
500円(介助者は無料/予約不要/先着80名迄)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp

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