2023年03月17日

第116回 VIDEO ACT! 上映会 〜震災後を見つめる映像作家たち〜 報告文

上映作品
『10年後のまなざし』(監督:村上浩康/山田徹/我妻和樹/海子揮一)


3月16日に『10年後のまなざし』を上映しました。本作は、宮城県周辺で活動する映像作家と市民が交流しながらネットワークを広めていくプロジェクト「みやぎシネマクラドル」が製作しました。2021年に東日本大震災から10年が経ったということで、4人の監督(村上浩康、山田徹、我妻和樹、海子揮一)が、各々20分の短編を作り、その4本を繋げたオムニバス映画です。
オムニバス映画が面白いのは、各々の監督の個性が違うので、その個性が如実に作品に表れてくることです。『10年後のまなざし』もそんな作品でした。
『冬歩き』(監督:村上浩康)は、村上監督が岩手県大槌町で暮らす、義理の父を撮った作品です。タイトル通り、冬の道を歩きながら父が震災の時、大槌町がどうだったか、この10年がどうだったかをぽつぽつと語っていく。その足取りとこの10年の歩みが重なっていく。監督と父の親密なコミュニケーション。ラスト、防潮堤から拝む初日の出に、複雑なものを感じました。
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『あいまいな喪失』(監督:山田徹)は、短い中に大胆な構成が見事な作品でした。冒頭、放射能の汚染残土を入れたシリコンパックの前で、自宅に入れない武政さんがいる。ここは福島県浪江町だ。避難生活では、母が認知症となり、家族間の軋轢が生まれていた。その微妙な関係をカメラは見つめていきます。そして、映像は再び浪江町の自宅前を映し出す。とても痛切なラストショットでした。
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『微力は無力ではない〜ある災害ボランティアの記録〜』(監督:我妻和樹)
東日本大震災では、全国から大勢のボランティアが被災地に入りましたが、奈良県から宮城県南三陸町に通う木下さんもそうした方の一人。ボランティアに何ができるのかという葛藤を抱えながら、木下さんは「自分が住む街に帰ってから、この被災地のことを語り続けることが大切」と語ります。そして、本作のタイトル「微力は無力ではない」は、木下さんの言葉でした。2014年に急逝した木下さんを、2018年、南三陸町の海に散骨するシーンに、胸が詰まります。
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『海と石灰〜仮設カフェをつくる〜』(監督:海子揮一)
震災から1年後、宮城県女川町で仮設カフェを作る人たちの話。特に面白いのが、「灯台しっくい」と呼ばれる塗料を使って、壁を塗る塗装職人。彼のお父さんも「灯台しっくい」を使う塗装職人でした。監督の海子さんは、本職は建築家だそうで、「人が作ることを信じている」と、上映後、語られていました。被災地の人たちが「震災時間」と語るような、復旧・復興という掛け声で押し流されていく時間の中で、ふと立ち止まる時間が必要だった、という言葉が印象的でした。
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上映後のトークでは、村上監督は、被災地でのマスコミ取材のことを話していました。山田監督は、2018年頃、原発災害の避難区域で、人々が帰還すると同時に、壊される家も出てきた時に、この作品の渡辺家の方に出会った、と言っていました。我妻監督は、「被災者だから」と一括りにせず、背景が違う人たちが出会うことが大切、と語っていました。
トークで面白かったのは、4作品をどういう順番で繋げたのか、という話。村上監督は、撮影前から、自分がトップバッターに、と言っていたそう。なぜなら、父に震災が起きた「過去」を語ってもらうからだ、と。また、海子監督は、人の創造性の話だから、一番最後がいい、と言っていた、と。撮影した時期で並べるのではなく、内容で並んだ4本だったようです。
(本田孝義)
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「みやぎシネマクラドル」facebookのページ
https://www.facebook.com/miyagi.cinemacradle/?locale=ja_JP
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2023年03月16日

第116回 VIDEO ACT! 上映会 〜震災後を見つめる映像作家たち〜 上映作品『10年後のまなざし』

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■ 第116回 VIDEO ACT! 上映会 〜震災後を見つめる映像作家たち〜
上映作品『10年後のまなざし』(2021年/80分/監督:村上浩康/山田徹/我妻和樹/海子揮一)
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2023年3月16日(木)18時30分より

宮城県周辺で活動する映像作家と市民が交流しながら
ネットワークを広めていくプロジェクト「みやぎシネマクラドル」は、
2015年に結成されました。
映像作品を観ながら議論する「映像サロン」や、
制作中の作品を観て意見を交わす「意見交換会」などを開催しています。

「みやぎシネマクラドル」に参加する4名の映像作家が
「震災10年という時間について考える機会を作りたい」と、約20分の短編を各々で制作。
この4作品を集めたオムニバス映画『10年後のまなざし』(2021年)を上映します。

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■上映作品
『10年後のまなざし』(2021年/80分/監督:村上浩康/山田徹/我妻和樹/海子揮一)

■作品解説
『冬歩き』(20分) 監督:村上浩康
岩手県大槌町の災害公営住宅に独り暮らす佐々木信巳さん(79歳)。
彼は本作の監督・村上浩康の義理の父である。2020年の大晦日、信巳さんの
日課である朝の散歩に同行し、被災から現在までの道のりを聞く。
同時に変わりゆく町の様相を捉え、震災がもたらした様々な事象をデータとして提示し、
大槌町の10年間を振り返る。個人の記憶と町の記録が冬の散歩の中に交錯する。

『あいまいな喪失』(20分) 監督:山田徹
家族で印刷業を営んできた武政は、原発事故で帰れなくなった浪江町の自宅と
避難生活で次第に老いていく認知症の母テツに深い喪失感を抱いていた。
いっぽう武政一家に嫁いだ茂子は、原発事故やテツの老いと正面から
向き合うことで自分の新しい人生を模索していた。現実を受け入れながら前に
進もうとする茂子と、震災前の時間に引き戻される武政。
家の解体とテツの介護を通じて、二人の家族像や原発事故の向き合い方の違いが顕になっていく。

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『微力は無力ではない〜ある災害ボランティアの記録〜』(20分) 監督:我妻和樹
2014年11月、ある災害ボランティアの男性が亡くなった。
東日本大震災時、居ても立っても居られない思いから南三陸町に入り、
人生の最後の3年半を東北の復興のお手伝いに捧げた彼は、
死後ゆかりの人びとの手によって南三陸の海に散骨された。
本作では、「微力は無力ではない」と自問自答しながら活動していた
彼の2012年時の映像、2018年の散骨時の映像、そして現在の南三陸町の風景を
つなぎ合わせることで、どのような人と人の交わりが町の復興を支えてきたのかを
改めて振り返り、被災地のために心を尽くしたたくさんの人の思いについて考えてみたい。

『海と石灰〜仮設カフェをつくる〜』(20分) 監督:海子揮一
震災から1年を迎えようとする2012年2月の女川。
人びとが集うための仮設カフェを改装する現場で、
海水を使った特別な塗料「灯台しっくい」を
みんなで壁に塗るワークショップが開かれた。
震災前の女川でもカフェの内装に施した塗装職人がその復元に駆けつけた。
彼とコーディネーター役の美術家を中心に生きる術としてのモノづくりを語り合い、
未来を拓くための場作りに参加した「生き残った人びと」との交流と声の記録である。
いまは仮設カフェはすでにない。しかし人は創造という手触りを頼りに未来を拓いてきた。
ゆえにこの映像は過ぎ去った記憶としてだけでなく、またいつかくる未来の光景かもしれない。

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■日時
2023年3月16日(木)
18時15分/開場 18時30分/開始
上映後、監督の村上浩康さん、我妻和樹さん
(山田徹さん、海子揮一さんはオンライン参加)を迎え、
トーク&ディスカッション。

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分

■参加費
500円(介助者は無料/予約不要/先着80名迄)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp

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