2023年は、ビデオアクト設立25年目の年。四半世紀もの間、継続してきた記念に、ビデオアクトの名物企画である3分間ビデオのオムニバス企画を行うことにしました。お題は『ニッポン・戦争・私2023』。この企画は過去に1999年、2002年、2003年、2015年と同じお題で4回募集したことがあります。1999年は盗聴法改悪や国旗及び国歌に関する法律が制定。2002年は9.11直後、そしてアフガニスタンへの侵攻。2003年はイラク戦争。2015年は「戦争法案」成立。…そして2023年は、ロシアがウクライナに侵攻し、パレスチナではイスラエル軍による空爆。日本でも軍拡に突き進んでいます。この機会にもう一度、本企画を実施してみようということになり、作品募集を7月より開始しました。
応募開始当初は作品が集まらず、企画倒れになるのではと心配しました。最終的には、15作品が集まりました。
上映はいつも使っている、東京ボランティア・市民活動センターを離れ、キノ・キュッヘで行いました。
制作者も含め、20名ほどの来場者がありました。
11月23日の『ニッポン・戦争・私2023』上映会では、『ニッポン・戦争・私1999』も併映しました。この作品は1999年に開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭に向けて公募され、集まった作品を無審査で上映したものです。これまでDVDなどのソフト化がなく、上映された機会も1999年以降はほとんどありませんでした。24年前(1999年)の日本社会と2023年現在の映像を並べて観ることは、面白い試みだったと思います。
まずは『ニッポン・戦争・私1999』(73分/23作品)を上映しました。
上映された作品は、上映順に以下の通りです。
Devolution 99/小林アツシ
LOVE&PIZZA/遠藤大輔
天皇と戦争/井谷早里
what do you want?/池原由起子
EXPRESSION/本間 拓
元軍国少年Aの果てしなき戦い/木村愛二
霧社事件と「日の丸・君が代」/佐々木健
(untitled)/丹羽順子
都市(破壊)計画における死体情報化の可能性/行友太郎
(untitled)/中原憲明
(untitled)/松原 明
ね・が・い/田村 周
最後の光景/本田孝義
徒然なるままに/神保知彦
(untitled)/佐々木有美
NO! を発する村より/玄番隆行
(untitled)/下之坊修子
不敬映画論映像編/平沢 剛
恐怖劇場/畠山宗明
(untitled)/正木俊行
花物語バビロン短縮版『花バビ』/相澤虎之助
日本からの難民/大田垣有美
戦争という名の子猫/野村瑞枝
制作当時は、奇抜でエフェクト効果が施されたと思われる映像でも、数十年後に観ると、どうしてもチープに感じられます。この感覚はミュージックビデオやCMなどを見た時によく起こりますよね。そうではなく、シンプルな表現の方が、古くならずに鑑賞できるのは世の常。これは制作者として心に留めておきたいことです。『untitled(丹羽順子さん)』や『戦争という名の子猫』は、今日の視点で観ても傑作でした。
残念ですが、いまは故人となられた制作者もおられました。
映像に登場された方でも最近亡くなられたPANTAさん(頭脳警察)や宮崎学さんの姿にグッときました。
休憩をはさんで、『ニッポン・戦争・私2023』(48分/15作品)を上映しました。
上映された作品は、上映順に以下の通りです。
河川敷の来訪者/村上浩康
安倍・「国葬」 献花に向かう人たち/湯本雅典
2022.12.14 Motobu, Okinawa/ニシノマドカ
4月 核燃サイクルの村で/堀切さとみ
43−23/shimizu4310
懸命に反戦歌!/鈴木敏明
Imagine/本田孝義
私には武器がある I HAVE WEAPONS./霞翔太
午前7時のスケッチ/柚木公奈
久保ちゃん/松原明
27年前/土屋豊
在日-反乱する肖像 天皇最後の勅令と恩赦/金成日
花岡悲歌より 朝露館/佐々木健
座間味島/土屋トカチ
死んで来い/義雄
『ニッポン・戦争・私2023』では、今日的テーマであるはずのロシア、ウクライナ等を描いた作品は『河川敷の来訪者』(村上浩康監督)をのぞき、ありませんでした。距離的な問題なのかもしれません。一方、軍拡に進む日本社会や、過去の戦争責任、原発問題、貧困問題などから『ニッポン・戦争・私』が見えてくる作品が多く集まりました。
オムニバス3分ビデオの面白いところは、同じテーマで、個々の作者の視点も全く異なるところにあります。さらに今回は『1999』と『2023』では、制作時期も異なります。2つの作品を続けて観てみると、24年の隔たりはあまり感じられず、重層的に「ニッポン」の姿を浮かび上がらせていました。
とはいえ、2つのオムニバス作品で合計38本も観るとドッと疲れました…。
会場であるキノ・キュッヘは上映施設が完備されたお店。開店31年目の居酒屋さんです。
上映終了後は、レイウアウトを変更し、そのまま懇親会へと突入です。
ビデオアクト主宰の土屋豊さんのによる司会で懇親会はスタート。乾杯のあと、来場された各制作者からのコメントをいただきました。続いて、『ニッポン・戦争・私2023』の観客賞を選定しました。会場内での議論の結果、一人何票でも「良かった」と思えた作品に挙手をし、数が多かった作品に観客賞を贈るルールを決めました。
観客賞は村上浩康さんの『河川敷の来訪者』に決定。
副賞として『ニッポン・戦争・私1999』のDVD(非売品)が贈呈されました。
今回上映した『ニッポン・戦争・私2023』の内で、DVD収録を許可している作品をまとめて、DVDとして頒布します。また、配信を許可している作品は配信も行う予定です。お楽しみに!
なお『ニッポン・戦争・私1999』のDVDは、販売の予定はありません。
文責:土屋トカチ
↑(写真:左)観客賞・副賞のDVD『ニッポン・戦争・私1999』。
<参考>
『ニッポン・戦争・私』シリーズ
DVD『ニッポン・戦争・私』シリーズ
<参考/告知記事>
時代と戦争、映像で考える オムニバス作品上映 国立で23日/東京(毎日新聞)