上映作品
『もっと真ん中で』 監督:オ・ソヨン
2024年最初のビデオアクト上映会が1月11日に開催された。上映会のタイトルは「複合差別に向き合う女性たち」で、上映作品は、オ・ソヨン監督の『もっと真ん中で』だった。上映後には、ソウルのソヨン監督とリモートで繋いでトークを行うことになっていたので、少し動員を心配していたが、どんどん人が集まってきて、約40名の参加となった。
『もっと真ん中で』は、大阪で生まれ育った李信恵(リ・シネ)さんが、2014年から約4年かけて闘い勝訴した「反ヘイトスピーチ裁判」についての物語だ。フリーライターであるシネさんは、当時激しくなっていたヘイトスピーチに対する批判的な記事を書いたことで、ネット上でネトウヨたちの標的とされ、卑劣な誹謗中傷を受けてしまう。シネさんは、「私のうしろには黙らされて泣いている人がいる」と、国内で初めて、ヘイトスピーチに対して個人で損害賠償を求めて提訴する。在日、女性の複合差別に対して立ち上がったのだ。
…と言っても、映画は闘いのシーンをメインに置かない。主な舞台は、多くの在日コリアンの人々が暮らす大阪の鶴橋だ。特に印象深かったのは、旨そうなホルモンの店、「茂利屋(もりや)」。シネさんが、ここ茂利屋に通うようになったきっかけは、鶴橋でのヘイトスピーチに対峙していた時にたまたま一緒にいた店主のキム・ヤンヒさんに「あんたしんどいやろ、店に飲みにおいで」と誘われたことだった。以来、茂利屋には数多くのシネさんの支援者が集まるようになる。店主のヤンヒさんも女性なら、映画に描かれる支援者もすべて女性。彼女らを絶妙な距離感で撮るソヨン監督自身も女性だ。シネさんのユーモア溢れる大らかな人柄も相俟って、店内はいつも楽しそうだ。
しかし、闘いの先頭に立ったシネさんは笑顔の裏で苦しんでいた。裁判のためには具体的なヘイトスピーチのひとつひとつを直視しなければならない。記録ビデオを見なければならない。「良い韓国人も悪い韓国人も、どちらも殺せ」。ここに書くだけでも暗澹たる気持ちになる言葉と向き合わなければならなかったのだ。――勝訴した夜、シネさんは泣く。いつものようにみんなで飲んだ後、子どものように泣きじゃくる。支援者の女性に抱かれながら。
上映後、司会のビデオアクトスタッフである本田さんは、「シスターフッドの映画だと思った」と言った。私もまったく同感、まさに女性同士の連帯の物語だった。そう言えば、上映会の参加者も女性が多かった。ソウルのソヨン監督とリモートで繋いだ質疑応答も、質問者は全て女性だった。「私は東京で生まれ育った在日朝鮮人だが、大阪には在日コリアンが密に繋がっている素敵な地域があることを、この映画を通じて多くの人に知ってほしい」、「韓国の女性たちは、熱くて、強くて、逞しい。男性は何をやっているのか?」等々、次から次へと質問が続いた。「映画のタイトルの由来は?」との質問に、ソヨン監督は「最初は、『茂利屋での夜』にしようと思ったが、シネさんに猛反対された」と答え、会場はどっと笑いに包まれた。ソヨン監督は、相当、茂利屋が気に入ったらしい。
新しい年、最初のビデオアクト上映会は、とても有意義な会となった。私にとっても、「日本人・男性・おっさん」として、何と向き合うべきかを考えさせられる機会となり、やってよかったと思いました。
(土屋 豊)
2024年01月14日
2024年01月11日
第120回 VIDEO ACT! 上映会 〜複合差別に向き合う女性たち〜 上映作品『もっと真ん中で』
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■ 第120回 VIDEO ACT! 上映会 〜複合差別に向き合う女性たち〜
上映作品『もっと真ん中で』
(2022年/83分/監督:オ・ソヨン)
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2024年1月11日(木)18時30分より
■上映作品
『もっと真ん中で( 더 한 복 판 으 로 The Hanbok on the Court)』(2022年/83分)
■作品解説
大阪で生まれ育ったフリーライターの李信恵(リ・シネ)さんは、
ヘイトスピーチに対する批判的な記事を書いたことをきっかけに
自身もインターネット上で激しい誹謗中傷を受けてしまう。
「自分のような思いを誰にもして欲しくない」と『反ヘイトスピーチ裁判』を始め、仲間と共に3年余りの裁判を闘い勝訴した。
2014年、オ・ソヨン監督は偶然大阪市役所前でヘイトスピーチに遭遇。
李信恵さんと反ヘイトスピーチ裁判について知り、撮影を開始。
裁判を支援する朝鮮舞踊のカン・フィソン先生や、民族学級で教鞭をとるヤン・チョナジャさんら
在日コリアン女性たちと共に、約3年間併走した。
■スタッフ&出演
・監督:オ・ソヨン
・出演:リ・シネ、カン・フィソン、ヤン・チョナジャ
■上映歴
2021年 仁川人権映画祭上映
2022年 済州助成映画祭オープニング作品招待上映
2022年 あいち国際女性映画祭コンペティション部門招待上映
■予告編
映画『もっと真ん中で』日本版予告01
https://www.youtube.com/watch?v=-XS-y2lKe10
■日時
2024年1月11日(木)
18時15分/開場 18時30分/開始
上映後、監督のオ・ソヨンさんとオンラインでつなぎ、
トーク&ディスカッション有。
■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分
■参加費
500円(介助者は無料/予約不要)
■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
■ 第120回 VIDEO ACT! 上映会 〜複合差別に向き合う女性たち〜
上映作品『もっと真ん中で』
(2022年/83分/監督:オ・ソヨン)
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2024年1月11日(木)18時30分より
■上映作品
『もっと真ん中で( 더 한 복 판 으 로 The Hanbok on the Court)』(2022年/83分)
■作品解説
大阪で生まれ育ったフリーライターの李信恵(リ・シネ)さんは、
ヘイトスピーチに対する批判的な記事を書いたことをきっかけに
自身もインターネット上で激しい誹謗中傷を受けてしまう。
「自分のような思いを誰にもして欲しくない」と『反ヘイトスピーチ裁判』を始め、仲間と共に3年余りの裁判を闘い勝訴した。
2014年、オ・ソヨン監督は偶然大阪市役所前でヘイトスピーチに遭遇。
李信恵さんと反ヘイトスピーチ裁判について知り、撮影を開始。
裁判を支援する朝鮮舞踊のカン・フィソン先生や、民族学級で教鞭をとるヤン・チョナジャさんら
在日コリアン女性たちと共に、約3年間併走した。
■スタッフ&出演
・監督:オ・ソヨン
・出演:リ・シネ、カン・フィソン、ヤン・チョナジャ
■上映歴
2021年 仁川人権映画祭上映
2022年 済州助成映画祭オープニング作品招待上映
2022年 あいち国際女性映画祭コンペティション部門招待上映
■予告編
映画『もっと真ん中で』日本版予告01
https://www.youtube.com/watch?v=-XS-y2lKe10
■日時
2024年1月11日(木)
18時15分/開場 18時30分/開始
上映後、監督のオ・ソヨンさんとオンラインでつなぎ、
トーク&ディスカッション有。
■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分
■参加費
500円(介助者は無料/予約不要)
■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp