第46回VIDEO ACT!上映会〜若者が捉えた環境問題〜
上映作品『高尾山、二十四年目の記憶』監督:宍戸大裕
去る8月30日に第46回上映会を開催した。今回の上映では「若者が捉える環境問題」と題し『高尾山、二十四年目の記憶』を上映した。VIDEO ACT!の上映会は、通常、平日の夜に行うことが多いのだが、この日は会場の関係もあって日曜日昼間の開催になった。そのせいばかりではなく、私たちの宣伝が足りなかったのか、20人ほどの参加者で少々さびしくはあった。こういう時は製作者の方々に申し訳なく思う。
さて作品である。高尾山と言えば、東京の西方に位置し多くの登山客も訪れるなじみ深い山だ。ビデオの冒頭でも霊山として守られてきた様子などを映し出す。ところが、1984年首都圏中央連絡自動車道(圏央道)建設計画が持ち上がり、高尾山にトンネルを掘ることが発表された。多くの公共工事に見られるように、こうした計画は地元の住民に相談されることもなく、建設反対運動が巻き起こった。このビデオでは反対運動が起きた頃の映像を挿入し、紛糾する住民説明会の様子などがうかがえる。中でも貴重なのは、住民たちが自主的に行った環境アセスメントの場面だ。擬似的に霧を発生させ、空気の流れを測定する様子はとても説得力がある。
こうした反対運動の歴史を振り返りつつ、このビデオの製作者たちは高尾山の豊かな自然をとても丁寧に描いている。何気ないトンボのカットや、四季折々の風景がこの山がいかにかけがえのないものであるかを物語る。
上映後のトークで、監督の宍戸大裕さんが語っていたのだが、このビデオは当初、反対運動を盛り上げるための「プロパガンダ」として製作を始めたそうだ。しかしながら、ビデオの中盤あたりに描かれるように、反対運動があるにもかかわらず着工された工事現場を取材し、推進派の方々の話を聞く中で道路の必要性にも思いが至る。「賛成か反対か」という問題に直面したとき両者の考えの間で思い悩む様子が語られることは意外と少なく、そうした意味でも正直に悩みを告白するナレーションは初々しい。
荒々しいコンクリートの橋脚が建つそばには今でも住民が住んでいる。そうした方々の話を聞くうちに反対運動のリーダーだった故峰尾幸友氏のことを知り、その業績に思いをはせる。人間ドラマとしても過不足がない。
全体としてとても丁寧に取材されているだけでなく、映像としても美しく迫力のある場面が数多くある。初めて作った作品でこうしたビデオを作ったとは驚きでもある。ただ少し残念なのは監督も語っていたのだが、あまり上映していない、とのことだった。どんな作品でも完成した時というのは道半ばで、見てもらうことで本当の完成になる。今回の上映がその第一歩になるなら、VIDEO ACT!上映会としてもうれしい。
報告文:本田孝義