上映作品
「生きていく」 監督:神吉良輔
5月13日、49回目のビデオアクト上映会がいつもの会場、東京ボランティア市民活動センターで行われた。上映作品は、出来立てホヤホヤ、首都圏では初上映となる神吉良輔監督の『生きていく』だった。ビデオアクト上映会では、ほとんどの場合、監督や作品の関係者に来場して頂いて、上映後にティーチインが行われるのだが、今回は監督が関西在住ということもあり、それが実現しなかった。そのことがとてもとても残念に思えるくらい、非常に面白い作品であった。
主人公の池田英樹さんは約10年前の交通事故が原因で、首から下が動かない。呼吸も人工呼吸器によって制御されている。しかし、池田さんは、思いっきり遊ぶ。たまに酔いつぶれて気絶する。そんな池田さんは、夏の北海道長期旅行を計画する。理由はふたつ。まだ北海道に行ったことのない両親に夏の北海道を見せてあげたいから。そして、サッポロビール園でジンギスカンを喰いたいから。「ええなぁ。やってみたいなぁ」。池田さんのつぶやきを聞きながら、私も思う。「いいなぁ、喰いたいなぁ、ジンギスカン」。
映画は、池田さんと両親とボランティア2人、看護士、ドライバーの総勢7名による北海道「強行突破」旅行の様子を中心に彼や彼女らと池田さんとのふれあいを淡々と描き出す。カメラワークとナレーション、インタビューの問いかけの声、どれもやさしい。それは、旅行中、何か事故が起きた時に責任を追及されないように担当者を決めない、という池田さんのやさしさに影響されたのかもしれない。
上映会参加者は、約30名。多くの人が熱心にアンケートに感想を書いてくれていた。上映後に読み上げられた神吉監督のメッセージによると、池田さんは、自分の経験を活かして、カウンセリングの資格が取得できる学校を探しているとのこと。同じようなハンディを持った人たちをサポートするのが目的らしい。
人は、ハンディがあろうとなかろうと、ちょっとずつ人に迷惑をかけながら、「生きていく」。そして、たまには酒を飲んで気絶する。何だか心がホワッとする作品だった。多くの人に観て頂きたいと思う。
(報告:土屋豊)