2010年9月24日(金)、第51回目のビデオアクト上映会を開催した。
今回はテーマを「野生動物との共生」とし、群像舎製作、岩崎雅典監督の
「平成 熊あらし〜異常出没を追う〜」を上映した。
ビデオアクト上映会は、かれこれ10年以上開催しているが、
この日は動物愛護週間ということもあり、動物に関する映像作品の上映を企画した。
この夏は国内のあちこちでイノシシやサル、シカによる被害が報道されていたことも
あってか、初めて参加された方も少なくなかった。入場者数は約20名だった。
監督の岩崎雅典さんが記録映画の世界に入ったのは26歳頃。
テレビ番組「いきものばんざい」の制作で意気投合した
フリーランスのスタッフ仲間が集まり、1981年に映像制作会社・群像舎を発足させた。
以来約30年にわたり、伝統文化や習俗に迫った作品「最後の丸木舟」
「又鬼」や、野生動物の生態を真摯に見つめた「ニホンザル物語 家族」
「イヌワシ 風の砦」などの記録映画を発表。
また、私たちの世代には忘れられない番組「野生の王国」(毎日放送)
「生きもの地球紀行」(NHK)、「素敵な宇宙船地球号」(テレビ朝日)などの
TV番組の企画・製作もされたという。そんな大ベテランの岩崎監督の作品を、
こじんまりした会で上映させていただき、嬉しく思った。
(上映後のアンケートにも、そのような感想がありました)
「平成 熊あらし〜異常出没を追う〜」の制作の切っ掛けは、
2006年度に、日本中で5千頭を越すクマが殺されたと新聞報道されたことにあったという。
これまで、人里におりてくることがほとんどなかった、クマ。
映画は、長野県軽井沢町で活動するNPO法人ピッキオによる
クマの保護活動や生態観測活動の様子が軸となっている。
捕獲したクマに人間の存在の恐ろしさを教えるため、犬や花火を使って
脅かしながら山に返す「学習放獣」や、2回以上捕獲された経験のあるクマを
薬物で駆除(つまり殺すこと)の様子も丹念に取材されている。
「共存たって無理な話」と農作物の被害を語る農家の方や、
「5千頭余りものクマを、ただ殺すことに耐えられない」と語った、
白神山地のマタギ(狩猟を生業としてきた人々)の言葉が忘れられない。
人間が山を、ドンドン開発してきたことや、里山に人が立ち入らなくなり、
荒廃してきたことが原因なのだとは思うが、簡単に解決できる程度の問題の
大きさではないと、じわじわ伝わってくる映画だった。
個人的には、飯田基晴監督の「犬と猫と人間と」(製作・映像グループ ローポジション)
の撮影にも関わったことがあるので、動物に関する映像を制作する苦労を、
少しは理解しているつもりだった。
しかし、クマのように、生態もまだまだ未確認なものが多い動物の記録映画を
制作するのは、並大抵の苦労ではないなと思い知らされた。
上映後は、岩崎雅典監督を交えてトークを行った。
野生動物と共生していくために必要なことは何かという質問に対し、
「野生動物との緊張感持つことが大切だ」と語った岩崎監督。
かつて日本人は、ニホンオオカミを絶滅させてしまった。
「人間社会に都合が悪いから殺す」だけでは解決へは程遠い。
人間が長い年月をかけて自然界に及ぼしてきた問題は、
気が遠くなるほど根深いな、と再考させられる上映会だった。
報告文 土屋トカチ
なお、群像舎の作品は配布中のビデオアクトカタログやウェブページからも
購入できます。
詳しくは群像舎のウェブページでご確認ください。