3月30日(木)、第54回 VIDEO ACT!上映会 〜路上発!生きるための情報番組〜
を予定通り開催した。
上映したのは、
ダンボールで作られたスタジオから路上に関するニュースを淡々と伝える
「首都圏路上ネットワーク」と、VJUの若手が作った路上レポート。
上映作品
◆『VJU REPORT』Vol.3-Vol5(2009年・2010年/25分)
◆『首都圏路上ネットワーク 2010年12月号』(2010年/35分)
1kg,92円。アルミ缶を集めて、もらえる金額の1例だ。
ベテランさんが、がんばって、一日やっと1800円強の収入であるが、
空き缶1sとはいったい何個か、どれだけ集めたら1800円になるのか、
考えると気が遠くなる。
だが民間の炊き出しに頼っているばかりでは何もならないから
空き缶を拾って生活費にする。
それなのに、指定業者以外のアルミ缶持ち去り禁止条例を施行したり
度重なる過剰な公園整備、ネットカフェ規制など、
仕事を出さないのに締め出す国や行政。
一理ある、または正しいと思う人もいるだろう。
しかし、ある人たちにとっては「生きるな」と言われているのと同じだ。
作品の「どっこい!生きてる路上人生」コーナーに登場する
ろくさんは、建築現場での過酷な労働がたたり、体を壊して職を失った。
今はしかたなく路上生活をしている。
また、特集では生活保護を受けて何とか路上生活から脱出した人に密着。
部屋がないから定職に就けないのに、仕事がないから部屋がなかなか借りられない。
これは特殊なことだろうか?
誰の人生でも、いつ何があるかわからない。
突然の地震と津波ですべてを失う人がいるように。
見えない放射能に、わけもわからず避難させられた人がいるように。
今回、東日本大震災の影響で、イベント類は自粛ムード。
だからこそ、普通に上映しよう、今だからこそ野宿者のことにも目を向けようと、
上映会を予定通り行った。
今回の震災について、
「何かしなくては」と、力になろうとする人がたくさん出てきた。
おかげで物資が十分集まって受け取り終了になった避難所もある。
または、何かが足りない、となれば自ら出向く人もいる。
ボランティアしなくても節電に励む人もいる。
それを知ると、世の中捨てたものじゃない、と思える。
知らせること、知ることの大切さもわかる。
それでも、帰ってはいけない故郷、知らされない現状について
胸を痛め、悩み、国やマスコミ、東電への苛立ちやあきらめを持つ人たちの
現実にどれだけ寄り添えるのかは難しい。
直接何かを試みても、
ただ話を聞いてどうするのか、署名を集めて何になるのかと問われる。
何のための行動か自分には明確でも、当事者には遠い場合もある。
VJUの遠藤大輔氏が言った。
「たとえば被災地の人がどういう情報を欲しているのか、という観点に立った報道が
なぜできないか。情報が中央寄りになりすぎていないか」
阪神大震災を経験したVJU・中森圭二郎氏は、
「阪神のときと今回でマスコミ報道にさほど変わりはない。情報は外面で、
どこに何が足りないとか、どこにいけばどういう支援がされている、という直接的な内容は
知らされていない」と明言。
「情報から遮断された多くの当事者に役立つようやっていきたい」
ダンボールのスタジオから伝えるのは、より当事者に沿った報道をしたいからだ。
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飯田橋ボランティアセンターでの上映に集まったのは約20名。
いつもより少なかったが、出かけづらい中、足を運んでくれた方々に心から感謝。
司会のビデオアクト・本田孝義が
「被災については、今何が起こっているか、から、被災して何があったのかを
アーカイブしていくことに、これからは変わっていくのでは」と話し、
遠藤氏は
「東日本大震災の死者数は1万人を超えたと報道があるし、日本中が大騒ぎしてる。
そのこと自体は日本人の底力として感動して受け止めるけれど、
ただ、日本の自殺者数は2.7万人なんです。
災害であれだけの人が亡くなって皆さんが心を砕くのなら、なぜ亡くなっていないけど、
生活に困窮している人がいることを受け止めてくれないのか、と訴えておきたい」
と話をまとめた。
メディアが当事者と一緒にいる、という状況をどこまで作り出せるか。
その観点から、新作映画を製作中のVJU、タイトルは「渋谷ブランニューデイズ」。
地下駐車場で暮らすホームレスに密着したもの。VJUならではの視点に注目したい。
ラストにその予告編も上映した。ただいま協賛者・支援者を募集中だ。
VJU(ビデオジャーナリストユニオン) http://www.vju.ne.jp/
DROPOUT TV(by VJU) http://www.vju.ne.jp/dtv/
路上でだってどっこい生きている。
自粛する心は大事にしたいが、普通に笑うことも生きることだ。
今回は、自分のリテラシーについても考えさせられ、
会場に足を運んでくれた人たちにも希望を感じた上映会だった。
報告 白銀由布子