2013年7月11日、ビデオアクト特別企画「幕の内憲法」を開催した。参加者は20名だった。テーマは、ズバリ「憲法」。憲法にまつわる話なら手法や内容は、何でもOK。プロ・アマ、国籍、職業など一切問わず、応募された作品はすべて無審査で上映するというもの。ただし、時間は3分以内という条件がある。
過去に、ビデオアクトのオムニバスビデオ(映像)として、「ニッポン・戦争・私」(99年/02年/03年)「憲法万華鏡」(05年)、「自由不平等」(06年)、「続・自由不平等」(08年)、「3.11」(11年)と実施してきた。05年に「憲法万華鏡」という今回と同様の「憲法」をテーマに企画を行ったが、現在の総理大臣や取り巻き達が憲法改変にやたらと意欲をもった言動が続いており、今年は再度「憲法」をテーマに実施しようと、ビデオアクトスタッフ間で意見がまとまり実現した。オムニバスビデオとしては通算8度目の企画で、15名からの作品が集まった。
05年の「憲法万華鏡」と比較して私が感じたのは、「憲法を守ろう」といったスローガン的なものが少なく、憲法がすでに壊れていることを示す表現が増えたことだ。たとえば亜北斎さん作の「憲法は素晴らしい」では、路上で野宿する人々やデモで弾圧される人々、靖国神社参拝する国会議員などの映像が引用され、憲法“は”素晴らしい・・・しかし現状は?となげかける。松原明さんの「憲法がなくなった学校」では、君が代斉唱の際、起立しなかった教員や、支援者をも威嚇する教頭先生らの様子が映し出される。他にも2013年の憲法について表現する、まさに幕の内弁当な「おかず」が並ぶ。明瞭な答えというより、観客が憲法について考えることで、咀嚼し、違った味を楽しめるオムニバスビデオになったと思う。
あえて苦言をいうと、条件である3分間以内というルールを大きく逸脱した作品があったことが残念だった。数秒程度なら、私ももちろん目をつぶる。伝えたい思いがあって、ルールをはみだしてしまうのも表現のひとつだと思う。しかし、約30秒程度時間をオーバーし、おまけにエンドロールまで載っている。憲法をテーマにした公募のオムニバスビデオで、さすがにそれはないだろうと思った。編集を担当したスタッフの「作品の内容を考えると切れない」という心情はわかるが、募集要項に「時間をオーバーしている作品は、頭から3分でカットする場合があります」と明記しているのであれば、せめてエンドロールはカットすべきだったのではと思う。弁当箱に収めてほしかった。ちなみに、過去開催した「ニッポン・戦争・私」(99年)では、途中でカットされた作品があった。
7月21日の参議院選で自民党が圧勝し、いよいよ日本国憲法がヤバくなってきた。会場からは、上映会や早急なDVD化を求める声もあった。実現に向けて動きたいと思う。
今回は、実験的に「観客賞」を用意した。観客の挙手で選ばれた作品は以下の2点だった。
・日本国憲法(前文)リーディング@沖縄県東村高江/古賀加奈子
・働く母に自由をください/小泉綾子
なお、集まった作品のタイトル及び制作者は下記の通りです。(上映順)
・日本国憲法(前文)リーディング@沖縄県東村高江/古賀加奈子
・壊憲NO!96条改悪反対6・18集会/壊憲NO!96条改悪反対 連絡会議
・2013参院選の予習の予習/田中ゆかり
・「ベアテ・ゴードン〜憲法草案を起章したアートディレクター〜」予告編/NPO法人東京シューレ シューレ大学&株式会社創造集団440Hz
・生活保護の人/蜷川あぐり
・働く母に自由をください/小泉綾子
・いまのうちに/土屋トカチ
・この土地は誰のもの/本田孝義
・街の政治家がいる/湯本雅典
・憲法は素晴らしい/亜北斎
・9条の未来〜If〜/ど・こ・で・も学校
・ピースメールアート展の記録/金成日
・辺野古埋め立ての怪+……/小林アツシ
・2013年 この町のありふれた光景/島田暁
・憲法がなくなった学校/松原明
(土屋トカチ)