第66回 VIDEO ACT! 上映会 〜TPPって何だ!?〜 報告文
本田孝義
2013年11月28日に、「TPPって何だ!?」と題して、『誰のためのTPP?―自由貿易のワナ』を上映した。世の中の関心が特定秘密保護法案に向かっていたせいか、観客は残念ながら少なく20名ほど。それにしても、次から次へといろんな問題が起きてくるものだ。
そもそもTPPという略称が定着したのはいいが、では、そのTPPってなんの略称だったかも分からなくなっているし、その中身についても関税についての話ぐらいにしか捉えられていないのかもしれない。(ちなみに、TPPはTrans-Pacific Partnershipの略で、環太平洋経済連携協定のことだそうだ。ますます難しい。)本作は、その複雑なTPPに関して初めて知る人にも内容が分かるような工夫が随所にされている作品だ。
『誰のためのTPP?』の冒頭はTPPについて知らなかった大学生がTPPという言葉に出会い、その中身を知るために様々な人を訪ねていく構成になっている。だから、初めて知る人も入り込みやすい。だが、そこから先はかなり複雑。作品が複雑という意味ではなく、TPPがあまりにも多岐の分野−農業・医療・食の安全・安心・労働など−に影響を与えるため、その内容を追いかけるのも大変だ。
TPPは突然出てきたものではなく、その背景にはグローバル企業が世界を席巻する「新自由主義」の考え方がある。本作ではコマ撮りアニメを使ってこの新自由主義を解説。とてもわかりやすい。
私は本作を見ながら、アメリカナイズという言葉を思い浮かべていた。戦後の日本のある時期までは、アメリカナイズという言葉はほとんど最先端という言葉と同義だった。しかし、TPPがアメリカの規制撤廃要求が背景にあることを知ると、日本がアメリカ化されるという意味でアメリカナイズという言葉が不気味に響くように思える。
残念ながら成立してしまった特定秘密保護=隠蔽法案に絡めて言えば、TPPの交渉は政治家すらタッチできない秘密交渉なのだそうだ。しかし、企業だけはそこに首を突っ込むことができるそうだからTPPの本質が分かろうというもの。
上映会の後は、本作にも登場している食政策センター ビジョン21主宰の安田節子さんに話をしていただいた。本作では充分語りきれていない部分を補足していただいて、TPPへの理解がより深まったのではないか。
政府がTPPの交渉に踏み出した今、その中身を知らないことは将来に禍根を残すことになる。まずはその中身を知る第一歩として、本作は最適だし、時間も37分と短いので学習会・学校の授業などでも活用できそうだ。