2015年01月31日

【報告文】第73回ビデオアクト上映会〜日本軍による性暴力被害〜

上映作品
『生きている間に語りたかった〜元「慰安婦」6人の証言〜』 企画・取材・構成:ビデオプレス
『大娘(ダーニャン)たちの闘いは続く〜日本軍性暴力パネル展のあゆみ〜』 監督:池田恵理子


 1月27日、「日本軍による性暴力被害」と題された73回目のビデオアクト上映会が開催された。上映作品は、『生きている間に語りたかった〜元「慰安婦」6人の証言〜』と『大娘(ダーニャン)たちの闘いは続く〜日本軍性暴力パネル展のあゆみ〜』。ゲストには制作者の松原明さんと池田恵理子さんにお越し頂いた。お二人とも1998年のビデオアクト設立当時から様々な面で協力して頂いているビデオアクティビストの大先輩だ。

 「問い合わせの電話が一本もない…」と心配されていた参加者の数だが、蓋を開けてみれば60人近く。これまでの上映会のベスト10に入るくらいの人数だった。上映会前日26日には”慰安婦”に関する報道で「国民の名誉が傷つけられた」として朝日新聞が歴史修正主義者たちに提訴された。敗戦後70年の今年、慰安婦の軍関与を認めた「河野談話」を見直す動きが安倍政権下で画策されているという話もある。息苦しい世の中だ。60人集まっても全く不思議ではない。

 上映は『生きている間に語りたかった』から始まった。1992 年12月に開催された「日本の戦後補償に関する国際公聴会」での元慰安婦の方々の証言を軸に再編集した2014年バージョンだ。韓国、北朝鮮、中国、台湾、オランダ、フィリピンから来日した6人の女性たちが語る「自分の身に起こったこと」は深く私の心に突き刺さった。そして、映像の持つ底力を再認識した。

 10代の、まだ恋とか愛の肌触りを知らない少女がわけがわからないまま取り押さえられ、レイプされる。それがどのような恐怖なのか、本当のところは私にはわからないと思う。しかし、彼女たちが「レイプされた」という言葉を絞り出す時のその表情を見れば、それがどのような体験であったかを胸が張り裂けるくらい想像することができる。映像で残すことは、やはりとても大事な仕事だと痛感した。

 続いて『大娘(ダーニャン)たちの闘いは続く』が上映された。2009年から現在に至るまで、中国各地で開かれている日本軍の性暴力を受けた女性たちの被害と闘いを伝えるパネル展の経緯を丁寧に辿った作品だ。先に上映された『生きている間に語りたかった』に登場する女性もこの作品の中で元気な姿を見せてくれていた。そうだ。闘いは続いているのだ。そして、この作品を作られた池田恵理子さんの闘いも20年近く続いてる。彼女は”慰安婦”に関わる作品をこれまでに何本作ったのだろうか?

 作品の中で印象的だったのは、若い人たちの積極的な姿勢だった。彼女や彼らは、事実を知りそれがねじ曲げられないように闘いを受け継ごうとしている。その力強さが心に残った。

 上映終了後はいつものようにディスカッションが始まった。「この作品を本当に観なきゃいけない政治家たちは観てるのか?」、「上映会の招待状を送っているが来てくれない」、「YouTubeで見せればいい」、「今の自粛ムードは異様だ」、「大学で教えられない」、「自治体の施設で講演会ができない」、「でも、”表現の不自由展”は人がいっぱいだ」、「戦争前夜を実感してる人は多い」、「絶対にはね返せる」などなど、いろんな意見が飛び交った。

 『生きている間に語りたかった』に登場する女性たちのうち、今でもご存命なのはお一人だけだという。両作品に登場する中国の万愛花さんの最期の言葉は「事実を伝えて欲しい。闘いを放棄しないで欲しい」だったと池田さんが教えてくれた。闘いを受け継がなければならない。
(土屋 豊)

150127.JPG

★『生きている間に語りたかった〜元「慰安婦」6人の証言〜』は、下記で観られます。
https://www.youtube.com/watch?v=4oqxlBJYhA0&feature=youtu.be

★『大娘(ダーニャン)たちの闘いは続く〜日本軍性暴力パネル展のあゆみ〜』は、下記で販売しています。
http://www.videoact-shop.com/2014/495
posted by VIDEO ACT! スタッフ at 01:27| VIDEO ACT! 主催 上映会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする