2015年06月05日

第75回 VIDEO ACT!上映会〜辺野古・闘いの現場から〜報告文

第75回 VIDEO ACT!上映会〜辺野古・闘いの現場から〜報告文
本田孝義

 6月4日、『泥の花−名護市民・辺野古の記録−』(監督:輿石正)を上映した。参加者は35名だった。通常、ビデオアクトの上映会は上映は60分ぐらいで、製作者を呼び、トーク、ディスカッションの時間をたっぷり設けているのだが、今回は製作者の輿石さんが沖縄県名護市在住ということと、上映時間が90分と長いので、製作者のトーク、ディスカッションは設けることが出来なかった。それでも本作を上映したいと思ったのは、沖縄県での辺野古新基地建設の状況が切迫しており、名護市民の立場から撮られたこの作品をぜひ多くの方に見てもらいたいと思ったからだ。なお、本編上映前に、輿石さんからのメッセージを上映した。

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 『泥の花』は、製作者の輿石さんが沖縄県名護市に住むようになってからこれまでのことを語って始まる。名護市での予備校経営者として、辺野古での新基地建設反対運動に参加してきた。2014年、海底ボーリング調査が始まるという前後、海上では小型船、カヌーによる抗議活動、キャンプ・シュワブゲート前では連日の抗議行動が行われている。海上では海上保安庁による監視・威嚇が日に日に激しさを増し、キャンプ・シュワブゲート前での沖縄県警による警備も厳しくなっていく様子がよくわかる。

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 本作の大きな特徴は、辺野古新基地建設反対運動に繋がる、かつての住民運動を取り上げていることだ。それは辺野古沖からも見える、金武湾での石油備蓄基地建設反対運動だ。沖縄が日本へ復帰した1970年代、三菱石油による石油備蓄基地建設計画が金武湾で起きる。広大な面積の海を埋め立てる計画に住民から反対運動が湧き上がる。本作ではその時に製作されたドキュメンタリー映画『沖縄列伝』の一部が引用されている。(余談になるが、この映画のナレーションは松田優作であり、どういう経緯で彼がナレーションをすることに
なったのか、知りたいところだ)この運動の中で語られたスローガン、「海、大地、共同の力」はそのまま現在の辺野古新基地建設反対運動にも流れている、と輿石さんは語る。

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 また、本作では米軍と日本の自衛隊が一体化しつつある状況も指し示す。
 かりゆしグループCEOの平良朝敬さん、名護市長の稲嶺進さんのインタビューを挟んで、これまで運動に関わり亡くなった方々への思いが語られる。そして、美しい辺野古を含む東海岸の海、島々の風景が映し出される。その後、辺野古新基地建設計画の概要が図で示されるのだが、この構成に製作者の思いを強く感じた。通常、こういう作品にあっては、理解しやすくするために、新基地建設の概要を先に伝えるものであるが、東海岸の美しい風景を見たあとにこの概要を見せられると、怒りがふつふつと湧いてくるのだ。
 本作は冒頭の米軍基地との境にあるフェンスから見上げた月から始まり、海や砂浜など印象的な風景、ゲート前の抗議活動を行うテントの様子など、何気ないカットに中に、製作者の愛おしさが滲んでいる。映像とは不思議なもので、撮した人の気持ちが乗り移ることがあるのだ。

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 そして『泥の花』は知念良吉が歌う「泥の花」で幕を閉じる。
 今やっと少しづつではあるが、辺野古新基地建設の問題がやっと本土でも報道されるようになってきた。しかしまだまだ足りないと思う。名護市民としての思いを託した『泥の花−名護市民・辺野古の記録−』を多くの方に見て欲しい、と思う。
 なお、本作はVIDEO ACT!のWeb Shopでも販売していますので、ご購入をお勧めする
次第です。→ http://www.videoact-shop.com/2014/361
posted by VIDEO ACT! スタッフ at 11:16| VIDEO ACT! 主催 上映会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする