2016年08月05日

第80回ビデオアクト上映会〜スマホの真実〜 報告文

第80回ビデオアクト上映会〜スマホの真実〜
報告:本田孝義

 去る8月3日に「スマホの真実−鉱物紛争と環境破壊とのつながり」(2015年/35分/監督:中井信介)を上映した。折しもポケモンGO!が大騒ぎになっているので、スマホそのものにも関心を持ってもらいたかったが、参加者は約20名と少し寂しかった。

コンゴ採掘スチルv.jpg

 この作品はコンゴ民主共和国でタングステンをマスクも付けず人力で掘り出している映像から始まる。ショッキングな映像だ。掘り出されたタングステンはアジアなどで精錬され、スマホのバイブレーターに使われているという。コンゴは1994年に起きたルワンダの戦争に巻き込まれ、2003年には東部に武装勢力が生まれ、彼らがレアメタルなどの鉱物に目を付け資金源とし、紛争が起きるようになった。この紛争では子供も多く殺され、ゴリラも半分殺されたという。こうしたことは日本ではあまり知られていないが、欧米では大問題となり、ヨーロッパでは紛争鉱物を使わない運動が起き、アメリカではレアメタルの原材料の現地調査を義務付ける法律が制定される。こうした動きは全世界に広がり、コンゴの紛争鉱物を買わない動きになっていったが、そのことによって困ったことも起きてきた。コンゴの鉱物の価格が暴落し、採掘で生計を立てていた人たちの生活を圧迫していったのだ。そこで、次の段階としてオランダなどヨーロッパでは、フェアフォンを使う、という動きが出てきた。フェアとはフェアトレードと同じ意味で、紛争鉱物ではないことが証明出来る産地の鉱物を使ったスマホを使う、ということだ。上映後のトークでは、100台ぐらいの小ロットでスマホを作っている工場もある、とのことだった。
 日本が直接関わっている鉱物採掘としてフィリピンの例が紹介される。ニッケルや銅の採掘では森林を破壊し、鉱山周辺では六角クロム、水銀、カドミウムが日本での規制値を超えて検出されている。元々この地に住んでいた先住民族に健康被害が出ている。日本では足尾銅山での公害が知られているが、公害の反省からまがりなりにも環境破壊を起こさないために規制ができたが、その規制値は海外では適用されないことをいいことにこうしてフィリピンで公害を起こしているわけだ。他にエクアドルの事例も紹介される。

スマホの真実 上映.JPG

 上映後には製作に関わった田中滋さんと技術に詳しい安田幸弘さんのトーク。田中さんからは現地での撮影の苦労話を。また、こうした海外での鉱物採掘がなかなか日本で知られていないのは、日本ではほとんど鉱物採掘をやっていないから、とのこと。本作は教材向けに作られているので、高校・大学の授業で上映するとショックを受ける学生が多いそうだ。クラウドファンディングで始まったフェアフォンについてもう少し詳しい話もあった。また、安田さんはスマホを分解するワークショップをやっていて、どこまでならスマホを自作できるかを探っているそうだ。そして、フェアフォンを買えばいいというわけではなく、コロコロ機種変更して新しいスマホを買うことのほうが悪い、と安田さんは言われた。(ちなみにフェアフォンはバッテリー、パネルなどが自分で交換できるとのこと)
 会場からの質問では、スマホの多くは中国で作られているが、本作にはほとんど組立工場の話がなかったのはなぜか、とあった。田中さんとしては、取材はなかなか難しいが、出来れば中国の工場の問題を入れた「スマホの真実」の続編を作りたいとのことでした。

■作品ウェブページ(下記から「スマホの真実」のDVDを購入出来ます。)
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/wakeupcall.html

posted by VIDEO ACT! スタッフ at 13:07| VIDEO ACT! 主催 上映会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする