2017年04月18日

第84回 VIDEO ACT! 上映会 〜戦後初「野党共闘」運動〜 報告文

 4月6日に、「第84回 VIDEO ACT! 上映会 〜戦後初「野党共闘」運動〜」を行った。上映作品は、『選挙が生まれる 〜長野と群馬の挑戦』(2016年/71分/製作: 湯本雅典)でした。この日、日比谷野外音楽堂で共謀罪反対の大きな集会が重なったせいか、参加者はやや少なく、20人ほどだったが熱い上映会だった。
 本作は2016年夏の参議院議員選挙における、一人区での野党共闘の様子を、長野県・群馬県で撮影した作品だ。まず、2016年1月、長野県での信州市民連合の集会の様子が映される。市民の間からは野党共闘を望む声がありつつも、この時点では各々の政党に温度差があったことが伺える。杉尾ひでやさんの名前はすでに出ていたが、まだ、本人が市民の前に顔を出すレベルではない。そんな中、国会では野党5党による、安保法廃止法案が提出され、野党共闘の機運はさらに盛り上がっていった。3月、長野県では民主党・共産党による政策協定が結ばれ、杉尾ひでやさんが野党統一候補として市民の集会にも現れた。杉尾さんは「市民の皆さんが主役」ということを強調していた。
 その頃、群馬県では市民グループの後押しで野党共闘が実現し、堀越けいにんさんが野党統一候補として立候補することになった。堀越さんは、作業療法士を辞めての出馬。選挙カーに乗っても、ギターを片手に歌を歌うという型破りな選挙戦。群馬県は強力な保守王国だから壁は分厚い。それでも、小さな集会をこまめに周り、立候補を決意する経緯を等身大に語る姿には、政治を身近に感じられる雰囲気があった。
 こうして参議院議員選挙の告示日をむかえ、長野も群馬も本格的な選挙戦が始まった。長野では、選挙妨害も起きた。本作では、長野での野党共闘実現に尽力した市民グループの戸惑いも映されている。選挙では党の選挙プロパーがスケジュール等を仕切り、市民グループが入り込む余地がない。せっかく彼らが動いているのに、従来通りのやり方しかできない政党も情けない。ただ、こうした彼らの姿には、選挙が特別なものではなく、自分たちの生活の延長線上にあることが見えてくる。とても貴重なシーンだ。また、群馬の堀越さんは、選挙期間中に選挙フェスを度々開催。多くのミュージシャンが駆けつけ、街頭演説会はさながら野外フェスのよう。こうしたやり方は、選挙を遠いと感じていた若者にも興味を持ってもらえたに違いない。
 投開票日。長野県の杉尾ひでやさんは当選。群馬県の堀越けいにんさんは落選。明暗は別れたが、堀越さんがまだ諦めていない姿を写して本作は終わる。
 選挙を写したドキュメンタリーは幾つかあるが、本作が面白いのは、立候補者が決まる過程から描かれていること。そして、そこに市民がどのように関わっていくのかを活写している。製作者の湯本雅典さんは、選挙を撮るのは難しいけど、そこに関わる人を見ると面白い、と言っていた。衆議院議員選挙も近いと言われ、野党共闘をどうするのか、という模索はすでに始まっている。が、政党レベルではギクシャクした関係も聞こえてくる。そうした情勢だからこそ、全国の市民グループは、本作を見ることをお勧めする。ここには選挙に関わる難しさも意義も、余すところなく描かれているから参考になることがたくさんあるはずだ。

『選挙が生まれる 〜長野と群馬の挑戦』のDVDは2000円で販売しています。申し込みは、こちら

報告文:本田孝義
posted by VIDEO ACT! スタッフ at 10:39| VIDEO ACT! 主催 上映会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする