第88回 VIDEO ACT! 上映会 〜あれから6年 福島県・双葉町の人々〜
報告文 本田孝義
去る12月12日に「第88回 VIDEO ACT! 上映会〜あれから6年 福島県・双葉町の人々〜」と題した上映会を行った。参加者は25名。
上映作は『原発の町を追われて〜避難民・双葉町の記録』(2017年/102分/堀切さとみ監督)だった。少し長い作品だったので、いつもより30分早く18:30に上映スタート。
本作は2012年に第一部、2013年に第二部が作られていて、VIDEO ACT!でも上映している。今年2017年に第三部が出来、堀切監督が全三部をまとめたバージョンを作られたので上映することになった。
第一部は福島第一原発のおひざ元、双葉町の住民が原発事故を受けて埼玉県のさいたまスーパーアリーナに避難してきたところから始まる。彼らはその後、加須市の廃校・旧騎西高校に移り新たな避難生活が始まる。役場の機能も移転した。堀切監督はとても自然体で双葉町の住民たちと接し、住民たちはぽつぽつと本音を語っていく。息子が東電で働く方の複雑な心境、仕事もなくただ食べて寝るだけの避難生活への不満、少しでも避難生活に潤いを取り戻そうと書道教室を始める方。こうした中で、東電社長は「全力で復興に取り組む」と言いながら、明確な謝罪はない。こうした東電の姿勢に井戸川町長はますます東電に対する怒りを募らせていく。
第二部になると、双葉町住民の間に分断が広がっていく。福島県で仮設住宅に入った人たちと旧騎西高校で避難生活を続ける人たちの間に横たわる温度差。この亀裂は議会による井戸川町長解任決議にまでいたり、紆余曲折の末、井戸川町長は退任する。この過程は見ていて辛いものがある。堀切監督は鵜沼友恵さんが双葉町の自宅に一時帰宅する際に同行、撮影をする。鵜沼さんは自宅の中の様子は撮ってもいいけど、映画では使わないでね、と言ったという。だから自宅の中は映らない。それでいいと私は思う。鵜沼さんの「人として見てほしい」という言葉が印象深い。こうして原発事故の約3年後、2014年3月に旧騎西高校の避難所は閉鎖される。
第三部が作られるまでには少し時間が空いている。旧騎西高校の避難所が閉鎖され、双葉町民もバラバラになり、焦点が見えにくくなったからと堀切監督は言う。そんな中、堀切監督は一人の牛飼いに出会う。鵜沼久恵さんだ。第一部・第二部に出ていた鵜沼友恵さんの母親でもある。鵜沼久恵さんは加須市に避難してしばらくしてから、畑を始めた。その過程では、加須市民との間で軋轢もあったという。しかし穏やかな表情の中にも、地に足をつけて生きていく覚悟のようなものも感じられる。鵜沼久恵さんは双葉町にいた時は牧場をやっていたが、政府の方針によって殺処分することを余儀なくされた。数頭だけ、殺処分に反対している希望の牧場に預けた。この一人の牛飼いの姿から、原発事故が奪ったものの重さが伝わってくる。
こうして全三部を続けて見て、時間の経過が作品に厚みを与えていることに気付く。それは原発事故が現在進行形であることに気付くということでもあるだろう。