2018年02月20日

【報告文】第89回ビデオアクト上映会〜現代のインフラ?コンビニエンス・ストア〜

上映作品
『コンビニの秘密―便利で快適な暮らしの裏で―』 監督:土屋トカチ


 私が生まれ育った群馬のド田舎の実家の近くにコンビニが出来たのは、いつ頃だったろうか? おそらく、中学生の頃だったような気がするが、とにかく衝撃だった。なにっ!夜11時まで店が開いてる!? 定休日なし!? まさか元旦でもやってるのか!? 夜7時にもなれば全ての店が閉まって何も買えなくなるのが当たり前だったあの頃の中学生にとって、それはまるでディズニーランド的な夢の世界だった…で、一体、誰が働く?

 中学生の頃の私の、その素朴な疑問に対する答えは、先日2月14日に開かれたビデオアクト上映会で明らかになった。365日24時間営業するためには、そのコンビニのオーナー自身に長時間労働を強いるしかないのだ! 上映した作品、『コンビニの秘密』の監督である土屋トカチさんは言う。「オーナー夫婦に布団は一組しか要らない。なぜなら、その夫婦は常にどちらかが働いているから」と。

 便利で快適な夢の世界を作り上げるためのからくり、「奴隷制度」ともたとえられるシステムの秘密は、まだまだあった。コンビニの約9割はフランチャイズ・チェーン方式の個人営業店。加盟店オーナーは、ロイヤリティと呼ばれる、わかりやすく言えば「上納金」をコンビニ本部に納める。その割合は、利益の60%が大手3社の平均値だという。で、そして、その大手コンビニ3社が問題視するのは、「食品ロスより機会ロス」。問題は、賞味期限切れの食品を廃棄する量より、売る機会を失くすこと、というわけだ。だから、コンビニ・オーナーは、たくさんの食品を本部から自腹で仕入れ、賞味期限が切れたら仕方なく廃棄する。安い値段で見切り販売すればオーナー側の利益率は上がるのに、本部はそれを推奨してない。食品を捨てた方が本部が儲かるという恐ろしいシステムだ。更に! ドミナントという生物種族の繁殖戦略のような巧妙な仕掛けもあった。同じ地域に同系列のコンビニを複数出店。配送の効率は上がるし、「あっちこっちにセブンがある。凄い!」という広告効果。そして、他社が参入しにくくなるという効果の結果、セブンというコンビニ種族が繁栄するというわけだ。しかし、複数出店されてしまったコンビニ・オーナーはどうなる? 客は当然、近くのコンビニに行くだろう。人口比率が大きく変動しない限り、一店舗の利益は減る。アルバイトだって、自分にとって良さげな店に移動して、更なる人出不足に陥ってしまう。オーナー夫婦に布団は一組しか要らないが、本部は痛くも痒くもない…というか、成長し続ける。

 そんな話を上映後にわかりやすく解説してくれたのが、この日のゲストで神奈川県逗子にあるコンビニのオーナー、飯山さんだ。「見切り販売は、オーナーの権利」だとして、当初からその権利を行使しているつわものだが、見た目はやさしく、話も面白い。ちなみにコンビニで販売している食品だけを使った「コンビニ・ダイエット」で二ヶ月で16キロも痩せたらしい。

 そんな飯山さんが関わっているのが、全国のコンビニエンスストア加盟店で組織する労働組合「コンビニ加盟店ユニオン」だ。ユニオンの主な目的は、@フランチャイズ法制定の推進、A加盟店の連携、Bフランチャイズ本部との対話(団体交渉)。未だ道半ばだが、着実にその目的に向かって進んでいる。

 今のコンビニのからくりは、明らかにおかしい。群馬の中学生もちょっと勉強すればわかるだろう。そのおかしさを変えていくユニオンの活動を応援したい。飯山さんは、地域に密着したコンビニの仕事が好きみたいだ。お話を聞いて、そう思った。だから、もう、「奴隷制度」とか、本当にやめてほしい。
(土屋 豊)

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http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/konbini.html
posted by VIDEO ACT! スタッフ at 14:05| VIDEO ACT! 主催 上映会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする