2018年04月27日

【報告文】第90回ビデオアクト上映会 〜強制不妊手術を受けさせられて〜

上映作品
『ここにおるんじゃけぇ』 監督:下之坊修子


第90回 ビデオアクト上映会は、下之坊修子さんが監督したドキュメンタリー映画『ここにおるんじゃけぇ』を上映した。

この作品は、生後1週間で脳性マヒになり、車イスに乗り24時間介護を受けながらも、猫と一緒にアクティブな自立生活を送る、佐々木千津子さんの日常を追ったドキュメンタリーだ。
広島カープの応援で野球場に行って歓声を上げ、60歳を超えてヘアサロンで髪をピンクに染め、どこにでも出かけて行く佐々木さんの日常は、おばちゃん的なパワーに溢れていて、観ていてどんどん吸い込まれていく。

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佐々木さんは、自分が感じた事をしたためたエッセイ集も出版している。
車イスで街を移動しながら「普通の人って同じ事をする・なんで?」と言った、はっとさせられるような言葉を紡ぎだす。

佐々木さんは、子ども時代は家族に囲まれて暮らしていたが、その後、施設に入所。そこでの生活に満足できず自立する事になる。
障がいを持っている人を施設に押し込める事の是非や、支援する団体との葛藤、介護してくれるヘルパーさん達との関係など、さまざまな人間関係があり、いろいろな事を考えさせられる。

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作品の後半では、佐々木さんが二十歳の頃に「強制不妊手術」を受けさせられた事が明かされる。「強制不妊手術」は、旧優生保護法にもとづいて「不良な子孫の出生を防止する」という名目で行われた、国による人権侵害の行為だ。
これにより、子どもをつくれなくする手術をされてしまった人は約1万6500人。そのうちの約7割が女性だそうだ。
今年になって、被害を受けた人が国に対して謝罪と補償を訴えた事によって、この問題が世間の注目を浴びるようになった。

この映像作品の前半で、「強制不妊手術」に触れなかったのは監督の意図だと思う。
前半と後半とで違った視点で作品を観る事ができる重層的な作品になっていると思った。

佐々木千津子さんは、2013年に63歳で亡くなってしまったが、この作品が人々に観てもらえる事で、佐々木さんの行き方や言葉は多くの人の心に残ると思う。

(報告文:小林アツシ)

※『ここにおるんじゃけぇ』のDVDは、ビデオアクトで販売されています。
http://www.videoact-shop.com/2014/551

posted by VIDEO ACT! スタッフ at 16:37| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする