6月19日(火)に『選挙が生まれる2・東京 私たちは歩き始めた』(2018年/68分/制作:湯本雅典)を上映した。参加者は約25名だった。
2017年4月に、湯本さんの作品『選挙が生まれる 〜長野と群馬の挑戦』(2016年/71分/製作: 湯本雅典)を、ビデオアクトでは上映したことがある。それは、2016年夏の参議院議員選挙での長野県・群馬県における野党共闘を取材した作品だった。この日の上映作品『選挙が生まれる2・東京 私たちは歩き始めた』は、その続編的な位置付けにあるが、今回の舞台は東京都。衆議院議員選挙での野党候補の一本化を進める市民主体の運動「野党共闘」が描かれている。
映画は、前原誠司民進党代表(当時)による希望の党への合流発言から始まる。野党第2党だった民進党が、事実上解散。希望の党の政策協定書の原案には、集団自衛権を基本的に容認すると明記されていた。これは、野党共闘を目指す市民の考え方とは相反する考え方だ。野党候補の一本化を進める「野党共闘」が実現できるのか。市民の奮闘ぶりが見どころだ。
湯本さんの取材は2016年11月からなので、市民運動がスタートする様子が丁寧に捉えられている。10月に結成された市民間の連絡組織「市民と野党をつなぐ会@東京」 は、東京都内で25ある小選挙区で「市民と野党の統一候補作り」を進める市民団体をつなぐ連絡組織。映画で主に登場する団体は、東京2区「みんなで未来を選ぶ@文京台東中央(ぶたちゅう)」、東京11区「チェンジ国政!板橋の会」、東京7区「選挙で変える!しぶや・なかの市民連合」などで、会議の様子や、明るく楽しい雰囲気の街頭宣伝が描かれる。しかし、時間をかけて準備してきたことは、希望の党が登場したことで混乱してしまう。その後、立憲民主党も立ち上がり、誰も予測していなかった事態へとなっていく。
圧巻なのは、東京11区「チェンジ国政!板橋の会」の会議で、市民が議論するシーンだ。議題は声明ビラについて。のちに立憲民主党から出馬する元民進党議員のビラだ。希望の党へ合流する予定で準備されたと思われるビラが、誤って戸別配布されてしまったという。ビラには希望の党の政策に倣って「北朝鮮には強い圧力をかける」とあり、「希望の党を全力で支援する」などと明記されていた。「野党共闘」を進める市民にとっては、到底容認できる記述ではない。
「手違いがあったのだろう」「政治家として不用意」「相手陣営に突っ込まれる。選挙にならない」などの議論が続く。これこそが民主主義なのだと実感させる、素晴らしいシーンだ。結論としては、東京11区では、野党候補の一本化を断念することになってしまった。それでも「選挙に行きましょう」と呼びかけながら、「チェンジ国政!板橋の会」が考えた政策を記したビラを配布する様子も描かれる。野党候補の一本化を目指す過程、たとえそれが実現しなくても、今できることをやる。タイトルの通り「選挙が生まれる」。その様が捉えられている。
選挙結果は、25の選挙区のうち13選挙区で野党統一候補が実現し、4つの選挙区で当選、比例復活で3名が当選した。市民が何もしなければ変わらないが、動けば変えられるかもしれない。そんな希望が出てくる映画だ。・・・希望といえば、希望の党の登場って、いったい何だったのだろう・・・。何が希望なんだか・・・。
上映後でのトークで、制作者の湯本さんは「ぼく自身、選挙運動は好きじゃないし、これまで距離を置いてきた。ただ、安保法制反対運動を取材していた頃、SEALDs(シールズ/正式名:自由と民主主義のための学生緊急行動)の若者が『野党は共闘』とコールするのを聞いて、本当にできるのか気になり、取材を始めた。すぐには政治を変えられない。しかし、変えられる可能性はある。その可能性を感じ、経験することが大切だと思う」と語った。
本作『選挙が生まれる2・東京 私たちは歩き始めた』は、市民団体の会議では観られてきたが、上映会としては初めて開催されたという。実にもったいない。市民が主体的に選挙運動を仕掛けていかないと、政治は変えられないし、未来はない。作戦を練るために!といいつつ、気軽な感じで、これを契機に上映会が広がってほしいと切に願う。
DVDは選挙が生まれる2・東京 私たちは歩き始めた2,000円で販売されています。
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報告文:土屋トカチ