2019年10月16日

【報告文】第97回ビデオアクト上映会〜地域と猫と人間と〜

上映作品
『黒澤泰&飯田基晴の地域猫活動のすすめ』 監督:飯田基晴

 去る9月24日、ビデオアクト上映会がいつもの東京ボランティア市民活動センターで開催された。上映会のタイトルは、「地域と猫と人間と」。上映作品は、飯田基晴監督の『黒澤泰&飯田基晴の地域猫活動のすすめ』だった。猫がベストポジションを確保して気持ち良さそうに寝転んだり、我が物顔で悠々と歩いている街を愛する私としては、某TV局の“岩合さんのネコ歩き”的な展開を予想してしまったが、作品の趣きはかなり違った。しかし、その内容は、“岩合さんのネコ歩き”的な状況を作り出すための方法論を丁寧に、そして実践的に描いた良作だった。

 作品は、3部構成になっていて、今回の上映会でも、その1部ずつを上映し、各部の上映後にゲストの飯田監督に解説して頂く形式だった。

 第1部は、かつて横浜の保健所に勤務し、数々の猫トラブルに対応してきた黒澤泰氏による「地域猫活動とは何か?」の特別講義の様子。黒澤氏の説明はとてもわかりやすく、地域猫活動が私のような人間のまさに“猫可愛がり”活動などではなく、野良猫による地域のトラブルを地域住民が主体となって解決していく環境衛生活動であることが十分に理解できた。ポイントは、今いる猫の「不妊去勢手術」と「トイレの設置」、そして「適切な餌やり」の3つ。しかし、この3つ、そんなに簡単に実践できるのか…。

 第2部は、そんな不安も含めて描くドキュメンタリー・パート。地域猫活動に奮闘する4つの地域を飯田監督が丁寧に見つめている。もし私が、たまたま町の自治会長かなんかになってしまった場合を想定して観ていたら、何か頭が痛くなってきた…(笑)。仕事でもないのに、口だけで手は動かさない住民への怒りを抑え、不妊去勢手術を行う為の野良猫捕獲作戦に励むその姿は、本当に涙ぐましい。あれは、大変なんだ。私も過去に一度だけ小さな野良猫を捕獲したことがあるが、あんな小さな体のどこからこんなパワーが出てくるんだ!?というくらいもの凄い力で暴れ回り、最後に私の両手両腕が血だらけになったことを思い出す。

 そして、第3部は、「地域猫のよくある失敗・ベストテン」。地域猫活動を始めてはみたが、なかなか上手くいかない自治会長さんにぴったりの内容だ。この失敗例を学び、日々の活動に活かせば、成功への道も遠くはないだろう。

 全編上映後は、集まった参加者とのディスカッションを行った。約15名と少ない人数ではあったが、実践的で具体的な話も聞けて、とても有意義だった。中には、「私も地域猫活動をしたいけど、誰を味方につけたらいいですか?」という質問も飛び出し、またひとつ地域猫活動が始まりそうな展開となった。

 話を聞きながら、ふと気になったので、ちょっと質問してみた。「地域猫活動が100%成功したら、街に猫がいなくなってしまいませんか? 今いる猫の不妊去勢手術が全部済んだら、10年後くらいには理論上、一匹もいなくなるのでは?」飯田監督と上映会参加者の答えは同じだった。「そんなことは、あり得ない」。そうだ。そんなことはあり得ない。猫は、とてもしたたかで、しなやか。人間たちの思惑を越えて、まったりと力強く生きていくだろう。だから、人間は、猫様と共生させて頂く努力を惜しんではならない。“岩合さんのネコ歩き”的状況は、自然には出来上がらないんだということを、馬鹿な猫好きである私が学んだ夜であった。
(土屋 豊)

※『黒澤泰&飯田基晴の地域猫活動のすすめ』のDVDは、ビデオアクトのWebSHOPでご購入頂けます。
http://www.videoact-shop.com/2019/785
posted by VIDEO ACT! スタッフ at 22:15| VIDEO ACT! 主催 上映会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする