1月12日に上映したのは『蟹の惑星』(製作・撮影・編集・監督:村上浩康)。緊急事態宣言下にも関わらず、20名の参加者がありました。
『蟹の惑星』は多摩川の河口に400m×200mの広さで広がる干潟に住む蟹の生態を描いた作品だ。導き手は、15年蟹の生態を研究している吉田唯義(ただよし)さん。
吉田さんは専門家ではなく、仕事をリタイアした後に多摩川の干潟を観察し始めたとのこと。本作が面白いのは、こうした吉田さんのスタンスもあって、生物ドキュメンタリーにありがちな、啓蒙臭さがないことだ。吉田さんは、蟹の巣穴の石膏型を作ったり、蟹を目隠しして爪の機能を考えてみたり、蟹の求愛行動を観察したりしている。監督の村上さんも、吉田さんの好奇心と同調するかのように、蟹の姿を映像に収めていく。
上映後、村上さんは、「根気さえあれば撮れます」と言ってましたが、その根気たるや大変なものだ。例えば、本作には蟹が脱皮する印象的なシーンがあるが、このシーンは何十個体の脱皮をつなぎ合わせたもので、撮影には3年かかったそうだ。
こうして、蟹の生態を見ていると不思議な感じがしてくる。この地球の主役は、蟹ではないのか、と。タイトルが『蟹の惑星』となっていることに納得した。

上映後、蟹の被り物姿で村上監督のトーク。蟹の足は4本、ということを知ってもらうための被り物でもあるそうだ。(ちなみに向かって右側、サルの被り物をしているのはVIDEO ACT!スタッフ、土屋トカチ。)村上さんの話では、2年前、台風19号が来た時に、上流から大量に物が流れてきて、この干潟はほぼ無くなってしまったそうだ。吉田さんも胸を痛めている、とのこと。それでも吉田さんは多摩川の観察を続けているそうです。村上監督は、本作と同時に同じ干潟で『東京干潟』という作品も撮っていて、そちらも俄然、見たくなりました。
『蟹の惑星』のDVD、ブルーレイ、上映情報などは、下記をご参照ください。
https://higata.tokyo/
(本田孝義)