去る7月5日、上記表題で『プラットフォームビジネス 「自由な働き方」の罠』(2022年/35分、監督:土屋トカチ)の上映を行いました。会場は定員満席となり、関心の高さがうかがえました。
“プラットフォームビジネス”とは、あまり馴染みがないかもしれませんが、ITを介して行われるビジネスです。本作では、フードデリバリー、特にウーバーイーツが取り上げられています。
この間の新型コロナ禍で、街中でウーバーイーツの配達員を見かけることが急増しました。しかし、彼らがどのような働き方をしているのかは、ほとんど取り上げられません。配達員は個人事業主とされ、ウーバーイーツから直接雇用される形にはなっていません。そのため、バッグを自腹で買い、自転車やオートバイは自分で用意しなくてはいけません。すきま時間で働ける、自由な働き方と言われる反面、労働者としての権利は保障されていません。
そうしたことを知るために、監督の土屋トカチさんは自らウーバーイーツに登録して、横浜でデリバリーを始めます。実際の労働時間と対価を数字で示してリアルです。
配達を頼む人と店の人、そして配達員を結ぶのはPCやスマホのアプリ。このアプリはAIで運営されています。そのため、配達員の上司はAIなのです。ウーバーイーツはこのアプリを提供しているだけ、という立場です。ですから、突然報酬が改定されても、理由などを配達員が知ることが出来ないブラックボックスになっています。また、配達中の事故についても配達員の自己責任。ウーバーイーツは雇用主ではないという言い訳で、労災の保障もありません。本作では、実際に事故を経験した方も証言しています。
こうした労働環境を改善するため、2019年にウーバーイーツ・ユニオンが結成されました。しかしながら、ウーバーイーツは団体交渉を拒否し続けています。
配達員を人間として扱わないウーバーイーツに対して、世界中でユニオンが結成され大規模なデモも起きています。韓国ではユニオンとの協約を結ぶ成果もありました。しかしながら、現状、日本政府は何もしていません。
上映後の質疑応答も活発でした。ウーバーイーツの仕組みが分かりにくいため、具体的な質問もありました。また、飲食店経営者の方からの質問もありました。加えて、会場にはユニオンの組合員の方も来ていただいていたので、具体的なユニオンの活動や今後の目標などもお話いただきました。
本作は教材として見てもらえるように、35分という短さです。監督の土屋トカチさんは、ウーバーイーツだけではなく、今後、様々な職種でこうした働き方、労働者が労働者として扱われないことが増えていくことを危惧しています。ですから、本作を授業や集会、勉強会などで活用してほしいと思いました。
(本田孝義)
※上映作品『プラットフォームビジネス 「自由な働き方」の罠』はアジア太平洋資料センターのウェブページでDVDとオンライン配信でご覧いただけます。
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/platform.html