上映作品『ミサイル基地がやってきた 島で生きる』(監督:湯本雅典)
2024年3月21日、第121回 VIDEO ACT!上映会を行いました。上映作品は、『ミサイル基地がやってきた 島で生きる』(監督:湯本雅典)で、完成記念上映会となりました。約70人の参加者があり、会場は満席となりました。
本作を見ながら、湯本雅典監督の集大成かもしれない、との思いを強くしました。近年、湯本監督は、沖縄諸島への自衛隊基地配備の問題を描いてきましたが、その前には、選挙での市民共闘を描いていました。本作は、確かに沖縄県石垣島でのミサイル基地配備の問題を描いているのですが、民主主義とは何かを鋭く問いかける作品になっているからです。
石垣市には、自治基本条例があり、住民投票についても定められていました。そのため、石垣島に自衛隊基地が作られるかもしれない、ということが分かってから、金城龍太郎さん、宮良麻奈美さんらは「石垣市住民投票を求める会」を作り、署名活動を始めました。彼らは決して「基地反対」を掲げたわけではなく、何も言えないまま基地が作られるのは良くない、と考えたからです。署名は有権者の1/3以上を集め、住民投票の条件を満たしたはずでした。しかしながら、石垣市議会は、住民投票条例制定を否決。以来、住民投票は行われていません。金城さんらは、署名をしてくれた人達への責任を感じ、訴訟を起こします。しかしながら、裁判では敗訴が続きます。その判決理由は滑稽極まりないものですが、詳細は省きます。さらに驚くことに、その間に、石垣市議会は自治基本条例から住民投票条項を削除してしまうのでした。意思表示をしたい、といういたってシンプルな思いは、こうして封じられていくのでした。
次に本作では、石垣市市長選挙が描かれます。ここでいわゆる保守派だった砥板芳行さんが、現職の市長と袂を分かって、立候補します。彼は、住民投票条例を否決した議員の一人です。ですから、基地建設に反対してきた花谷史郎さん(石垣市議会議員)は、当初、にわかには彼のことを信用出来ませんでした。しかしながら、様々な困難を乗り越え、砥板芳行さんは野党統一候補になるものの、現職市長には勝てませんでした。
こうして、2023年3月、石垣島に陸上自衛隊駐屯地が開設。この日のことは、本土でも断片的にニュースとして報道されましたが、先に述べたような経緯があったことは、おそらくほとんどの人が知らないでしょう。
本作を見て感じるのは、自分が住んでいる地域で何か問題が起きた時、意思表示出来るのか、意思表示をする機会はあるのか、ということでした。ですから、冒頭、本作は民主主義とは何かを問いかける、と書いたのです。沖縄の基地問題に関心がある人だけではなく、学校の社会科の授業などでも見せてほしいと思いました。
上映後、活発な意見交換がありました。
本作は、下記にて購入できます。上映権付なので、ぜひ、上映が広がってほしいと思います。
https://yumo.thebase.in/items/84420095
(報告文:本田孝義)