2024年07月15日

【報告文】第123回ビデオアクト上映会〜子どもたちの目から見た戦争〜

上映作品
『ぼくたちは見た―ガザ・サムニ家の子どもたち―』 監督:古居みずえ

 グーグルに“今日のガザ”と入れてみる。7月14日「ガザの学校空爆、17人死亡」、7月9日「イスラエルが学校攻撃、29人死亡」。昨年10月の戦闘開始以来、ガザでは3万5千人を超える人たちが亡くなったという。その内、子どもは1万3千人以上。その数は、今でも毎日増え続けている。信じ難いほどの、許されない数字だと思う。しかし、その数字の向こうの一人ひとりの、そしてその家族たちの苦しみを思う想像力を、私たちは麻痺させていないだろうか?

 去る7月11日、123回目のビデオアクト上映会が開催された。上映作品は、古居みずえ監督の『ぼくたちは見た―ガザ・サムニ家の子どもたち―』。イスラエル軍によるガザ攻撃は、勿論、昨年10月から始まったことではない。この作品は、今から15年前、2008年から2009年にかけての攻撃によって、一族29人が殺されたサムニ家の子どもたちを描いている。

 テレビニュースのように激しい空爆シーンが続くわけではない。その代わり、目の前で家族を殺された子どもたちの日常やインタビューの様子が淡々と描かれる。そして、その静かで率直な語り口が、私たちの胸に突き刺さる。父親が銃撃されるのを目の前で見た12歳の少年は、飛び散った父の血がこびりついた石を集める。母親のバラバラになった死体を見つけた場所に毎日通う13歳の少女は、「ここに住みたいくらい」だと話す。両親の頭から脳が飛び出していたのを見た12歳の少女、3歳の男の子が見た姉の目から飛び出した目玉…「信仰と教育でイスラエルに抵抗する。それは武器より強い」、「支援物資を望んでいるわけではない。ここでどんな酷いことがあったかを知ってほしい」、「イスラエルは、どうして私たちから全てを奪ったの?」。映画のラストの少女たちの言葉だ。

 サムニ家一族110人は、一軒の家に集められた。そこにイスラエル軍が3発のミサイルを撃ち込んだ。「今、同じことがあちこちで行われている」と、上映後のトークで古居監督は話す。昨年10月の戦闘開始直後、古居監督はこの作品の上映会を開始した。理由は、2023年10月7日がスタートではないことを多くの人に知ってほしかったからだ。「ナレーションによる説明がないからこそ、”体験”できた」。約25名の参加者の内の一人は、そう感想を述べた。また、初めてビデオアクト上映会に参加したという人は、この問題に詳しくないからと前置きしつつ、「どうしてホロコーストを経験した人たちが、同じことができるのか?この悲劇を終わらせるにはどうしたらいいのか?」と率直な意見を語ってくれた。

 私たちにできることは何か?まずは、何が起こっているのか、起こってきたのかを知り、本気で想像することだろう。上映会後の打ち上げで、古居監督に聞いてみた。どうして子どもを撮ることに決めたんですか?と。その答えは、「映画の冒頭に映る、瓦礫の山の前で呆然と立ち尽くす少女と出会ったから」。私たちは、古居監督が捉えたその少女の瞳をスクリーンを通して本気で見つめなければならないだろう。
(土屋 豊)
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