2026年01月26日

【報告文】第132回ビデオアクト上映会 〜蛇口の向こう側〜

上映作品
『どうする? 日本の水道―自治・人権・公共財としての水を』 
(2019年/41分/監督:土屋トカチ/製作:アジア太平洋資料センター〔PARC〕)

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去る1月22日、「蛇口の向こう側」と題した132回目のビデオアクト上映会が行われた。上映作品は、ビデオアクトのスタッフでもある土屋トカチ監督の『どうする? 日本の水道―自治・人権・公共財としての水を』。参加者は約20名で、その内の半数近くはこの問題に関心のある初参加の人たちだった。あまりにも身近で、ふだん水道のことなど考えたこともなかった私にとっては、とてもエキサイティングで興味深い社会科の授業のような上映会だった。勉強になったし、自分事として考えさせられた。

日本の水道普及率は98%を超え、自治体が責任をもって水道を運営することで、日本国憲法第25条の生存権のひとつである「公衆衛生」が保障されている。作品は、この日本の水道のこれまでとこれからの課題を詳細に解説してくれる。

始まりは1890年の水道条例。「衛生を確保する水道は、私企業ではなく自治体が運営すべき」という理念が規定された。それから時は流れ、戦後の復興期である1957年には水道法が制定され、ここでも「生存権」の保障の具体化が謳われた。そして、1950年代に26.2%だった水道普及率は、1970年代には80%となり、現在は98%超、ほぼ国民皆水道となった。

しかし、ここで問題が…「人口減少による自治体の財政難」、「水道管などインフラの老朽化」、「職員の高齢化・減少」などだ。そこで政府が打ち出したのが、2018年の改正水道法。衆参合わせてわずか18時間の審議で可決されたその法律では、水道事業の運営権を民間企業に売却するコンセッション方式が推奨されている。

コンセッション方式? なんだそれ? 人間は、水がなければ生きられない。だからこそ、自治体が責任をもって水道を運営することで、その生存権を保障するのではなかったのか!?

コンセッション方式とは、自治体が浄水場や水道管などの施設の所有権を持ったまま、民間企業に運営権を売却する方法らしい。企業は水道の運営に関わる全ての権限を保有し、その運営権を担保に銀行や投資家から資金調達ができる…なにそれ? 人間の命より経済成長を優先する新自由主義政策ではないか!

作品は、このコンセッション方式の問題点を丁寧に指摘する。全国で初めて下水道のコンセッション方式が導入された浜松市の市民の声、企業にとって利益の出ない災害時対応の不安、公共で行うことの透明性、水道の「安心・安全」は公共の方がコストは安い、民営化の失敗が明らかとなり再公営化したパリなどの海外の実状。そして、複数の自治体の事業を統合し、職員を減らさずにダウンサイジングすることで、その地域に合った課題解決方法を見出した岩手県の自治体の例。やり方はある。工夫はできる。私たちが自分たちの命の水に関心をもち、積極的に関わっていけば。

監督の土屋トカチさんを交えた上映後のディスカッションは、エキサイティングで有意義な場となった。木更津では作品内に登場したフランスの水企業「ヴェオリア社」の下水汚泥堆肥化事業が進んでいる、能登はまだ水道が復旧していない地域があるじゃないか、2022年にコンセッションを始めた宮城では既に水質事故が起きている、浜松の市民運動は凄い! 水道料金は全国一律にすべき!などなど、とにかく様々な意見、感想が飛び交ったが、クライマックスはトカチさんが参加者に向けて出したクイズだった。「ミネラルウォーターと水道水、どっちが安全?」

さて、答えは皆さんに考えて頂きたいと思います。ちなみに、今回の授業に参加した劣等生である私は、ミネラルウォーターを買いまくっていました。すみません、勉強になりました。水は人権、利益の対象ではなく公共財。このことを再確認させてくれた上映会、やってよかったです。
(土屋 豊)

※本作品のDVDはこちらで販売しはています。
https://parc-jp.org/product/suido/
posted by VIDEO ACT! スタッフ at 14:44| VIDEO ACT! 主催 上映会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする