2017年06月12日

第85回 VIDEO ACT! 上映会 〜原発事故自主避難は「自己責任」か?〜 報告文

まだ記憶に残っている方が多いと思うが、4月4日に今村雅弘復興大臣が記者会見での質問に対して激高し机を叩きながら、「なんて君は無礼なことを言うんだ」「なにが無責任だって言うんだよ」「出ていきなさい」「うるさい」などと暴言を吐き一方的に会見を打ち切った。
テレビ各社がその様子を報道(NHKは現場に来ていなくて報道しなかったらしい)、質問した西中誠一郎さん自身が撮影した動画もYouTubeで公開され反響を呼んだ。
https://www.youtube.com/watch?v=mOUSSJmg_dE


ネットでは西中さんについて調べてバッシングする人たちも現れたが、なによりも大臣が激高し声を荒げる映像はインパクトがあった。そして今村大臣が『新世紀エヴァンゲリオン』のネクタイをしていた事も話題を膨らませた。

安倍首相は今村大臣の進退について聞かれ「被災者に寄り添って復興を支援する方針は同じ。辞任の必要はない。」などと断言したが、25日に今村大臣が自民党二階派のパーティで東日本大震災について話すなかで「まだ東北で、あっちの方だったから良かった」と発言。
講演後にマスコミから問われたが、今村大臣は問題発言をしたという自覚もなく、秘書官のような人物がメモを渡したところ、“しょうがないから撤回しますよ”という雰囲気で「改めてしっかりとお詫びを申し上げます」と言った。その後パーティーに来た安倍首相が「きわめて不適切な発言がございましたので、総理大臣としてまずもってお詫びをさせていただきます」と発言し、今村大臣は辞任した。
http://blog.fujitv.co.jp/goody/E20170426001.html

今村大臣が激高した記者会見での質問は、東日本大震災の際の原発事故で、自主避難した人たちに対する住宅無償提供を、今年3月末で国が打ち切った事についてだった。

西中さんは、以前から自主避難している人たちに寄り添うように取材をしてきた。記者会見に潜り込んだかのようなバッシングをしている人たちもいるようだが、実際には前日に電話をして取材する了承を得て参加している。

記者会見での今村大臣の説明には原子力政策を進めてきた国が率先して責任をとるという姿勢が感じられず、大臣は避難している人たちの実情も知らなさそうだった。そこで、自主避難している人たちの声を聴き続けてきた取材者として、質問して正さなければならないという気持ちで発言したところ、今村大臣が激高した。

今村大臣は激高するなかで「ここは公式の場なんだよ」などという発言もした。彼にとって記者会見は、大臣の言う事を素直に聴き、問題点があってもそれには触れずにマスコミが国の方針をそのまま垂れ流す場であるべきなのだろうか?

ビデオアクトでは、西中さんに今回の記者会見の動画だけではなく、これまでに彼が取材した映像も加えた上映会を提案した。上映会の当日に編集ができあがった33分の映像作品は、ナレーションが入っていないため西中さんが上映中に自分で読むという暫定版で、粗削りではあったが、当事者の生々しい声が聞ける迫力のあるものになった。

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福島から埼玉に避難した女性は、住宅無償提供の打ち切りに対して「なぜ、加害企業の黒字経営を無視して、私たち弱い者を追い込むような事をするのか?」と問いただす正す。
彼女は「子どもたちから、いわき市での友だちを奪い、親戚も奪い、父親も奪い、新鮮な海の幸、山の幸、きれいな海、満天の星空、全部を奪ってしまった」なか、子どもたちが5年間、埼玉で育ち友だちにも恵まれているのに、住宅無償提供の打ち切りで、「また子どもたちから友だちを奪ってしまわなければならないのか」と悲しんでいるのだ。。

避難生活を続けている人たちや支援している人たちの切実な想いが伝わる映像だ。ぜひ作品として完成させて広めてほしいと思う。

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今回の上映会では、遠藤大輔さんが取材・構成した『終の住処を奪われて』という作品も上映された。

現在、全国約30ヶ所で、国と東京電力に対して福島原発事故の過失責任を問い、損害賠償を求める裁判が行われている。
この作品は、そのなかで東京訴訟団と首都圏弁護団によって制作された作品だ。
37分の作品で、こちらはナレーションも音楽も入ったDVDとして頒布されている。

【DVD頒布と上映会+原告・監督講演の案内】
http://www.jnep.jp/genzenren/DVD.html

【予告編動画】
https://www.youtube.com/watch?v=aVhkYTtMqF0


作品は、東京都内の大学で非常勤講師として働いている鴨下祐也さんを中心に展開している。
なぜ鴨下さんかというと、自主避難している人たちのなかで、こうした映像などのメディアに登場する人は、バッシングされてしまう事があるために、なかなか顔を出せない人が多いらしい。

鴨下さんは、小学生の時にジャガイモとトマトの接ぎ木に成功し、大学時代には放射性物質を扱う作業も経験している。

卒業後、いわき市の高校の教員となり、生徒達と共に屋上緑化の取り組みをして、そのなかで水耕栽培のノウハウを培う。土地に依存しないで野菜を移動できるという利点を活かして「動ける農業 都市・地方交流型 野菜生産プロジェクト」を考え、いわきビジネスアイデアプラン・コンテストの最優秀賞を受賞する。

このプロジェクトは鴨下さんの人生を賭けた夢となったが、福島原発事故によってその夢は奪われてしまう。

結婚して、いわき市の郊外に一軒家を買って住んでいた鴨下さんは、震災り直後に原発周辺3キロで避難の指示が出ている事を知り、家族と相談して一家揃って避難する事にした。放射性物質を扱う作業を経験していいたから、その危険性を感じていたのだろう。

生活のためには、いわき市での仕事も続けなければならないために、週末には車で片道3時間かけて自宅に帰る二重生活を続ける事になった。

国が避難地域と指定した所以外からの自主避難の人たちには、無償住宅の提供、高速道路料金も無償化など、限られた保証しかなく、生活を再建するのは困難だ。

鴨下さんは、都内の大学で非常勤講師の職をみつけたが、原発事故を経験し、慣れない土地に急に引越してきたためか、子どもが不登校になってしまい、何度も転居を繰り返した。

避難地域と指定された所以外から自主避難した人たちに対して、ネットでは「避難しなくても良いのに勝手に避難した」などとバッシングをする人たちがいる。自主避難している人たちについて「気分や誤解や避難しているだけ」などと思っている人たちも多い。

しかし、国が決めた避難区域は、当初は福島原発を中心に同心円で設定されていて、その後、空間線量を基準として区域が決められたが、国が決めた避難区域以外が安全などという保障は無い。

ホットスポットと呼ばれる高線量地帯は関東全域に点在し、食品の摂取や呼吸による内部被曝は、空間線量では計れない。

そもそも原発を「安全だ」と言い張ってきた国が決めた区域が信用できるだろうか?
小さな子どもの事が心配で、さまざまな葛藤の結果、自主避難する事を決断した母親たちも多い。

鴨下さんは、国と東京電力に対して損害賠償を求める東京訴訟の団長になった。
裁判が進むにつれて明らかになった事がある。

●原発事故は防げた可能性がある。

●安全な被曝量の基準は無い。

国は原発事故の責任を放棄し、勝手に決めた基準を押しつけて、それに当てはまらない自主避難の人たちへの住宅無償提供を打ち切った。

鴨下さんの自宅があるいわき市は、一度も避難指示が出ていないが、自宅に帰って測定したところ、かなりの汚染されている事がわかり、自宅を手放すという決断をせざるをえなくなった。

自宅で測定している映像をNHKも取材していて、鴨下さんは取材の条件として「ベランダの土が汚染されている事は必ず放送してほしい」と伝え約束させたが、後日、NHKの担当者から電話があり、「ベランダの土が汚染されている事を放送したら、不安を煽ってしまう」などという理由で放送されなかったそうだ。

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自主避難をしている人たちに対する国の政策について、今回の上映作品2つに共通し、複数の人が指摘している問題点がある。

住宅無償提供の打ち切りは、加害者である国が一方的に賠償基準を決めて線引きをして、原発事故の被害者に対して「これだけ払うから終わりにしろ」と言っている、という指摘だ。加害者の側が勝手に賠償額を決めるなどという事はあってはならない。

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今年3月17日には、群馬・前橋地方裁判所で、福島原発事故の国と東京電力の過失責任を問う住民訴訟の、全国初の判決が出た。

賠償額が少ない事は問題だが、津波予見性の瑕疵など、東京電力と国の責任を同等に認め、避難指示区域の内外を問わず、避難の合理性も認定された。

国と東京電力には、同等の責任があるのだ。国は責任を放棄してはならない。

(報告文:小林アツシ)
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2017年06月08日

第85回 VIDEO ACT! 上映会 〜原発事故自主避難は「自己責任」か?〜

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■ 第85回 VIDEO ACT! 上映会 〜原発事故自主避難は「自己責任」か?〜
2作品上映
『終の住処を奪われて 福島原発東京訴訟』
2017年/37分/取材構成:遠藤大輔

『緊急報告動画/自主避難者は「自己責任」か(仮題)』
2017年/30分(予定)/撮影・編集・構成:西中誠一郎
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■2017年6月8日(木)19時より

東日本大震災から6年が過ぎた。
「裁判でも何でもやればいい」「自己責任」
震災復興の陣頭指揮を執る、現役復興大臣とは思えない発言が飛び出した。
この発言から3週間後、大震災は「東北で良かった」などと
再び暴言を吐き、のちに辞任した。
自主避難者の今をみつめる2作品を上映する。

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■上映作品@
『終の住処を奪われて 福島原発東京訴訟』
2017年/37分/HD/
取材構成:遠藤大輔
製作著作:福島原発被害東京訴訟原告団・福島原発被害首都圏弁護団
企画制作:ビデオジャーナリストユニオン

●参考動画 「終の住処を奪われて ー福島原発被害東京訴訟ー」 完成のお知らせ


■解説
あれから6年、原発事故は未だ収束していない。福島県外の避難者は8万人を超え、
その多くが生活の不安を抱えている。だが、国・福島県は避難住宅の無償提供を打ち
切るなど、復興の名のもとに避難者を切り捨てる姿勢だ。そんななか、国と東京電力
の責任を追求し損害賠償を求める、福島原発被害東京訴訟が進行中だ。原告団長・
鴨下祐也さんの活動を軸に、事故被害を科学的に検証、避難者たちの闘いを追った。

■上映作品A
『緊急報告動画/自主避難者は「自己責任」か(仮題)』
2017年/30分(予定)/HD
撮影・編集・構成:西中誠一郎

●参考動画 自主避難は「自己責任」〜復興大臣明言


■解説
2017年4月4日、東京電力福島第一原発事故での自主避難者について「自己責任」
「裁判でも何でもやればいい」と発言し、「うるさい!」「出て行きなさい!」と
激昂し、暴言を吐いた今村雅弘復興相。この問題発言を引き出したフリージャーナリ
スト・西中誠一郎氏による緊急報告動画を初公開。避難指示区域解除の影響や、自主
避難の現状、南相馬の20mSv「基準」撤廃住民訴訟などについてレポートする。

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■日時
2017年6月8日(木)
18時30分/開場 19時/開始
上映後は、監督である遠藤大輔さんと西中誠一郎さん、
そして自主避難当事者の方を交えた
トーク&ディスカッションを行います。
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分
(現在、JR飯田橋駅西口は、工事中のため大きく迂回することになります。ご注意ください)

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )


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2017年04月18日

第84回 VIDEO ACT! 上映会 〜戦後初「野党共闘」運動〜 報告文

 4月6日に、「第84回 VIDEO ACT! 上映会 〜戦後初「野党共闘」運動〜」を行った。上映作品は、『選挙が生まれる 〜長野と群馬の挑戦』(2016年/71分/製作: 湯本雅典)でした。この日、日比谷野外音楽堂で共謀罪反対の大きな集会が重なったせいか、参加者はやや少なく、20人ほどだったが熱い上映会だった。
 本作は2016年夏の参議院議員選挙における、一人区での野党共闘の様子を、長野県・群馬県で撮影した作品だ。まず、2016年1月、長野県での信州市民連合の集会の様子が映される。市民の間からは野党共闘を望む声がありつつも、この時点では各々の政党に温度差があったことが伺える。杉尾ひでやさんの名前はすでに出ていたが、まだ、本人が市民の前に顔を出すレベルではない。そんな中、国会では野党5党による、安保法廃止法案が提出され、野党共闘の機運はさらに盛り上がっていった。3月、長野県では民主党・共産党による政策協定が結ばれ、杉尾ひでやさんが野党統一候補として市民の集会にも現れた。杉尾さんは「市民の皆さんが主役」ということを強調していた。
 その頃、群馬県では市民グループの後押しで野党共闘が実現し、堀越けいにんさんが野党統一候補として立候補することになった。堀越さんは、作業療法士を辞めての出馬。選挙カーに乗っても、ギターを片手に歌を歌うという型破りな選挙戦。群馬県は強力な保守王国だから壁は分厚い。それでも、小さな集会をこまめに周り、立候補を決意する経緯を等身大に語る姿には、政治を身近に感じられる雰囲気があった。
 こうして参議院議員選挙の告示日をむかえ、長野も群馬も本格的な選挙戦が始まった。長野では、選挙妨害も起きた。本作では、長野での野党共闘実現に尽力した市民グループの戸惑いも映されている。選挙では党の選挙プロパーがスケジュール等を仕切り、市民グループが入り込む余地がない。せっかく彼らが動いているのに、従来通りのやり方しかできない政党も情けない。ただ、こうした彼らの姿には、選挙が特別なものではなく、自分たちの生活の延長線上にあることが見えてくる。とても貴重なシーンだ。また、群馬の堀越さんは、選挙期間中に選挙フェスを度々開催。多くのミュージシャンが駆けつけ、街頭演説会はさながら野外フェスのよう。こうしたやり方は、選挙を遠いと感じていた若者にも興味を持ってもらえたに違いない。
 投開票日。長野県の杉尾ひでやさんは当選。群馬県の堀越けいにんさんは落選。明暗は別れたが、堀越さんがまだ諦めていない姿を写して本作は終わる。
 選挙を写したドキュメンタリーは幾つかあるが、本作が面白いのは、立候補者が決まる過程から描かれていること。そして、そこに市民がどのように関わっていくのかを活写している。製作者の湯本雅典さんは、選挙を撮るのは難しいけど、そこに関わる人を見ると面白い、と言っていた。衆議院議員選挙も近いと言われ、野党共闘をどうするのか、という模索はすでに始まっている。が、政党レベルではギクシャクした関係も聞こえてくる。そうした情勢だからこそ、全国の市民グループは、本作を見ることをお勧めする。ここには選挙に関わる難しさも意義も、余すところなく描かれているから参考になることがたくさんあるはずだ。

『選挙が生まれる 〜長野と群馬の挑戦』のDVDは2000円で販売しています。申し込みは、こちら

報告文:本田孝義
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2017年04月06日

第84回 VIDEO ACT! 上映会 〜戦後初「野党共闘」運動〜

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■ 第84回 VIDEO ACT! 上映会 〜戦後初「野党共闘」運動〜
上映作品
『選挙が生まれる 〜長野と群馬の挑戦』
2016年/71分/製作: 湯本雅典
ナレーター:大川久美子
協力:信州市民連合、希望・長野ネット、ぐんま市民連合 へいわの風、かたつむりの会他
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2017年4月6日(木)19時より

2016年参議院選挙、
長野・群馬の野党共闘の記録。

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【上映作品】
『選挙が生まれる 〜長野と群馬の挑戦』
2016年/71分/製作: 湯本雅典
ナレーター:大川久美子
協力:信州市民連合、希望・長野ネット、ぐんま市民連合 へいわの風、かたつむりの会他
作品紹介ウェブページ 


選挙が生まれる 長野と群馬の挑戦(予告編)

■解説
2015年9月、集団的自衛権の行使容認を含む
「安全保障関連法」が成立した。
その後、全国で同法を廃止させるために、
野党は共闘して国政選挙を闘おうという声が上がり始めた。

長野県では、2016年1月の段階で民主党、
共産党それぞれが候補者を内定していた。
そこで、信州市民連合が結成され、
市民から候補者の一本化を求める声が強くなっていく。
市民団体「希望・長野ネット」は、独自に野党と市民の
対話集会を開催し、野党に対して直接市民が意見を言う場をもった。
このような地域や市町村での独自の動きが、
野党統一候補(杉尾ひでやさん)を誕生させた。

群馬県では、民進党の候補者がなかなか決まらない状態が続いた。
群馬県は、自民党の首相4人を輩出した超保守王国だ。
その群馬で新しい市民団体がいくつか誕生、また市民団体を束ねる
「ぐんま市民連合 へいわの風」もできた。そこで活動していた
堀越けいにんさんが、野党統一候補として自らの作業療法士という
仕事を辞して立候補した。その後、堀越さんの人生初の選挙活動を支える
市民の輪が、どんどん広がっていった。

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■日時
2017年4月6日(木)
18時30分/開場 19時/開始
上映後は、監督である湯本雅典さんを交えた
トーク&ディスカッションを行います。
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分
(現在、JR飯田橋駅西口は、工事中のため大きく迂回することになります。ご注意ください)

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )

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2017年02月14日

第83回ビデオアクト上映会〜沖縄の自然とヘリパッド 報告文

2月7日(火)に『いのちの森 高江』(2016年/65分/制作:「いのちの森 高江」制作委員会 監督:謝名元慶福)を上映した。参加者は約25名。描かれている事態の重要性から、たくさんの参加者を見込んでいたのだが、すでに関東圏でも上映会が開催されているためか、あるいはヘリパッドがすでに完成したからなのか判らないが、ややさびしい集客数だった。

沖縄県国頭郡東村高江は、那覇から北へおよそ100キロ。「やんばる」と呼ばれる熱帯雨林に囲まれたのどかな山村で、人口150人ほどの小さな集落だ。この村へ、全国から動員された機動隊が押しよせ、反対する市民・住民を排除し、生態系を支える木々を伐採し、オスプレイの訓練に使用するヘリパッドが建設された。機動隊による「土人発言」は話題となったが、問題の深層については、本土メディアではあまり報じられてこなかった。

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この作品には65分というコンパクトな長さに、集落の成り立ちや、自然といのちを守るために闘った人々の歴史、住民の暮らしや思い、絶滅危惧種や天然記念物、「やんばる」固有種などのいのちを育む豊かな森の様子が、ちょうどいい配分で収められている。森や海岸線を俯瞰したドローンにより撮影された映像もある。問答無用に進められるヘリパッド建設の理不尽さが伝わってくる作品だ。

見どころは、ヘリパッド建設現場守る機動隊を背に、チョウ類研究者・アキノ隊員が語る場面だ。「沖縄の動植物たちは、日本政府とアメリカ政府の欲によって、数えきれないほど殺されています。今、ここでは常識が通じないんです。おまわりさんの仕事が、命を殺すことになっているんです。」機動隊員の表情が少しずつ変化する様に、ほんのわずかだけれども、希望が見えた気がした。

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トークゲストは、「ゆんたく高江」のメンバーで映像作家の古賀加奈子さん。映像制作会社に勤務しながら、5年以上にわたって高江に通い、長編ドキュメンタリー映画を制作中だという。古賀さんは「高江での暮らしは、自給自足に近い生活。子どもたちは野生児のように野山を駆け回っています。本作は高江の暮らしぶりが描かれていて、住民自身が気に入っている作品です。ヘリパッド建設だけが理由ではないけれど、この度、子どものいる3家族が引越をすることになっってしまった。150人のコミュニティのうち、1割が減ることになるのです。ヘリパッドは完成してしまったけれど、ほんとうの受難はこれからだと思う」と語った。

本作DVDは「上映権」付で1枚1500円です。上映権付としては破格の値段です。地域や仲間どうしで、上映会を開いてほしい作品です。出演者の一人、チョウ類研究者・アキノ隊員のブログから購入可能です。
http://akinotaiinnorinshitaiken.ti-da.net/e9243655.html

報告文:土屋トカチ

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2017年02月07日

第83回 VIDEO ACT! 上映会 〜沖縄の自然とヘリパッド〜

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■ 第83回 VIDEO ACT! 上映会 〜沖縄の自然とヘリパッド〜 ■
上映作品
『いのちの森 高江』
2016年/65分/制作:「いのちの森 高江」制作委員会
監督:謝名元慶福 語り:佐々木愛
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2017年2月7日(火)19時より

いのち豊かな森を守るのは私たち人間の使命です。
オスプレイにおびえ、怒り、闘う、高江の記録。

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【上映作品】
『いのちの森 高江』
2016年/65分/制作:「いのちの森 高江」制作委員会
監督:謝名元慶福 語り:佐々木愛
撮影:中川西宏之/アキノ隊員/比嘉真人/宜野座盛克/新里しんじ/照屋真治/謝名元慶福
音楽:島袋霞
編集:新里しんじ
録音:シネマサウンドワークス
題字:岸本一夫
協力:新里勝彦/古謝将嘉/安里嗣頼/屋富祖昌子/屋富祖建樹/
    高江洲義一/高江洲義政/伊礼一美/野村岳也
制作:「いのちの森 高江」制作委員会
著作:文化工房 慶

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■解説
沖縄県国頭郡東村高江。那覇市から北へ約100キロ、
人口150人ほどの小さな集落だ。ここでは全国から集められた
機動隊員数百名が、ヘリパッド建設に反対する住民や支援者と
対峙している。20年前、日米両政府が合意した北部訓練場一部
返還の条件は、新たなヘリパッド建設だった。
「負担軽減」だと土地を返す代わりに、使い勝手のよい場所を
新施設とさだめ、森を破壊する。「基地強化」へつながる矛盾がそこにある。
映画には絶滅危惧種や天然記念物、やんばる固有種などの
いのちを育む豊かな森。そして、この土地に暮らす住民の生活と
抵抗が記録されている。

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■日時
2017年2月7日(火)
18時30分/開場 19時/開始
上映後は、古賀加奈子さん(「ゆんたく高江」メンバー)を交えた
トーク&ディスカッションを行います。
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分
(現在、JR飯田橋駅西口は、工事中のため大きく迂回することになります。ご注意ください)

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )

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2016年12月14日

【報告文】第82回ビデオアクト上映会〜映画批評家と現代医療〜

上映作品
『がんを育てた男』
制作:ビデオプレス

 先日、私は50歳になった。自分が歳を取ったからなのか、公言する人が増えたからなのかわからないが、周囲にがんの人が多い。自分の父親も数年前から二つのがんを患っている。父親のがんが判明した時は、かなり焦って右往左往した。その時に、もし、この『がんを育てた男』を観ていたならば、あんなに動揺しなくても済んだかもしれない。

 上映会は、去る12月9日(金)に開催された。年末の金曜日、忘年会やら何やらいろいろあって参加者の人数が心配されたが、開場するやいなやどんどん人がやってきて、最終的には50名近くになった。やはり、がんは他人事ではないということか?

 物語の主人公は、映画評論家の木下昌明さん。現在、78歳。私の父親より一つ年下だ。木下さんは、四年前の2012年にがんを宣告される。勿論、動揺する。この作品は、初めから現代医療に抵抗して「がんを育てるぞ」と決め込んだ格好良い男の話ではない。そこが、面白い。

 木下さんは、セカンドオピニオン、サードオピニオン…と、自分が納得するまでがんと向き合う方法を探し続ける。医師との面談を自らビデオに撮り、関連書籍を読み漁る。そこには、これまで映画評論とともに社会運動にコミットし続けた彼の批評精神に通底する反骨心が見え隠れする。

 とは言え、先述したように、これは格好良い男の話ではない。「すっかり、おじいちゃんになっちゃったよ…」と病床でこぼすチャーミングな“おじいちゃん”の物語だ。その魅力を引き出したのは、彼の友人である制作者の松原明さんと佐々木有美さんだ。二人は私より先輩なので、友人ががんになったからといって、私のように右往左往したりしない。「まぁ、しょうがないよ」と軽口をたたきながら、木下さんの“闘い”をやさしくサポートする。そして、映画は、病気を見て人を見ない現代の外科手術第一主義の医療の問題を浮き彫りにして行く。木下さんは最終的に…

 …と、ここから先は、本編を是非ご覧頂きたいと思う。本作『がんを育てた男』は、来年劇場公開予定とのこと。あっとその前に、現在の木下さんのがんとの向き合い方をご自身で3分の映像にまとめた作品が今週土曜17日に開催される「レイバーフェスタ2016」で上映されるということが、今回の上映会のディスカッションの時に発表されました!「がんを育てた男」の現在を、皆さん是非ご覧下さい!

(土屋 豊)
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2016年12月09日

第82回 VIDEO ACT! 上映会 〜映画批評家と現代医療〜

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■ 第82回 VIDEO ACT! 上映会 〜映画批評家と現代医療〜 ■
上映作品『がんを育てた男』
2016年/60分/制作:ビデオプレス
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2016年12月9日(金)19時より


「めったにない映画ですぞ! 敢えて自分の尻をむきだした男が
ここにいて、知友が智力腕力を集中させて一篇のドキュメンタリー
を創りあげた。これこそがこんにちの芸術だ!」(小沢信男)

「この映画の主張は“患者が選択する”だ。選択の連続が実存だ」(鎌田慧)。


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7月のレイバー映画祭で初披露されたドキュメンタリー映画『がんを育てた男』。
だれもが、がんになる時代に、どう治療に向き合ったらいいのか。
ベルトコンベア式・手術万能の医者任せでいいのか。
映画評論家・木下昌明さんのケースに密着したこのドキュメンタリーは、
多くの人に示唆を与える作品だ。映画祭後、作品は追加撮影も行い、
さらにブラッシュアップされたヴァージョンを上映する。

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【上映作品】
『がんを育てた男』
2016年/60分/制作:ビデオプレス
出演:木下昌明・志真泰夫(緩和ケア医師)・近藤誠(がん専門医)ほか。
取材:松原明・佐々木有美。

■解説
2012年12月、映画批評家の木下昌明さんにがんが見つかった。
そのときかれは「頭が真っ白になった」という。医師は即手術を
求めたが、これを拒否し、しばらく様子をみることにした。その日
から、常識とされているがん医療との闘いが始まった。何人もの
医師との面談をビデオで撮り、本を読み、治療法を模索した。
それはかれの映画批評の精神と通底していた。
まだ動けるうちは動く。仕事に出かけ、映画の試写会や国会前の
デモにも参加しつづけた。それをカメラは追った。はたして……。

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■日時
2016年12月9日(金)
18時30分/開場 19時/開始
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分
(現在、JR飯田橋駅西口は、工事中のため大きく迂回することになります。ご注意ください)

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )


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2016年09月30日

第81回ビデオアクト上映会 〜学生が見つめた地域医療と公害〜 報告文

今回のビデオアクト上映会は、大学のゼミでつくられた2本の作品を上映した。

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『埋もれた時限爆弾〜さいたまアスベスト被害〜』
2016年/36分/制作:武蔵大学社会学部2年 永田浩三ゼミ

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建設資材や家庭用品をはじめ、さまざまな用途に使われてきたアスベスト(石綿)がもたらす健康被害については多少の知識はあったが、この作品を見てあらためて大きな問題だと感じた。

肺癌や中皮腫などの病気で亡くなる人もいるほどの被害状況にもかかわらず、国は経済を優先させてきた。法的規制がされた今後も、さまざまな形で被害が広がっている。「自分は関係ない」と思っていても、思わぬところで知らないうちに被害を受けてしまう可能性もある。そして発病するまでに30〜40年かかる場合もあり、亡くなっていく人が、これからどんどん増えていくとされている。

この映像作品は、そうした問題をわかりやすく説明している。社会の問題について考えたい人に観てもらえる作品としては及第点に達している。
アスベストの問題に関心が高い人たちが集まる集会などでは評価されるだろう。ただ、あまり関心が無い人達にも見てもらえるような工夫は、もっとしたほうが良いと思った。

この作品は5人でつくった作品だが、制作者の1人、古川さんは、重く、つらい取材ではあるが、あと1年半の学生生活の間、1人ででもこの取材を続けて作品をつくりたいという。映像制作を通して作者自身が変わって新たなチャレンジに向かっている。

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『たったひとりのお医者さん〜地域医療の現場から〜』
2015年/19分/企画・演出:新行希望 法政大学社会学部水島宏明ゼミ

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和歌山県日高郡日高川町寒川(そうがわ)にある寒川診療所で働く医師の出口雅枝さんと、その診療所に来る患者さん達との触れ合いを綴った映像作品。

撮った本人が関西弁のナレーションで、医師や患者さんにツッコミを入れるという、かなり風変わりで面白い作品だった。

いわゆる「限界集落」という言葉は適切かどうか迷うところだが、この寒川も人口が少なく高齢の方が多いところだ。
そこに派遣された出口さんと他の3人の診療所のメンバーは、患者さんたちに明るく振る舞い、患者さんとして来ているお年寄りの人たちもこの診療所に来る事でなごんでいるようだ。そんな感じがよくわかる、ほんわかしたアットホームな映像作品になっている。

医師の出口さんは、どんなきっかけでこの診療所に来たのか、もっと都会で勤めたいとは思わなかったのか、人口が減っている地域での医療についてどんな考えをもっているのか、将来どうしたいと思っているのか……、映像を観ていて知りたくなる事、聞きたくなることはいろいろある。
だが、そんなインタビューなどはしない。とにかくひたすら診療所でのやりとりや、体が弱っていて診療所に来られない人の家に診療に行くところを撮り続け、たまに「インタビュー」とは言えないような普通の会話をして、編集した映像にナレーションでツッコミを入れるのみである。

そして、医師の出口さんは、いつもよく笑っている。

たいした医療設備は無い診療所だから、ちゃんと検査する必要がある時には長時間かけて他の病院に行ってもらう。緊急の場合には、付近の街から救急車に来てもらうが、遠くて時間がかかるので間に合わない時もある。
「間に合わん時は、死んじゃう時もあるんとちゃう?」と、この時だけはちょっとインタビューっぽくなるのだが、出口さんは「そうやねえ」などと言って、それでも笑ってる。

いわゆる「限界集落」を社会問題として捉えたドキュメンタリーとは違う、時間も短い「小品」っぽい作品だが、一度観たら忘れられない作品になっていると思った。

報告文:小林アツシ
 
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2016年09月29日

第81回 VIDEO ACT! 上映会 〜学生が見つめた地域医療と公害〜

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●第81回 VIDEO ACT! 上映会 〜学生が見つめた地域医療と公害〜 
上映作品
『たった一人のお医者さん 〜地域医療の現場から〜』
 2015年/19分/企画・演出:新行希望 法政大学社会学部水島宏明ゼミ
『埋もれた時限爆弾〜さいたまアスベスト被害』
 2016年/36分/制作 : 武蔵大学社会学部2年 永田浩三ゼミ
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2016年9月29日(木)19時より
誰もが、映像制作をできるようになって久しい。
大学のゼミでも、様々な映像作品が作られ、鋭い視線で社会を見つめる
作品も作られている。今回は、学外では見られる機会の少ない
大学生の作品2本を併映する。

上映後、制作者・関係者を交えたトーク&ディスカッション有(予定)。

【上映作品】
『たった一人のお医者さん 〜地域医療の現場から〜』
 2015年/19分/企画・演出:新行希望 法政大学社会学部水島宏明ゼミ

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■解説
人口420人のうち約半分が高齢者という、和歌山県中部に位置する
日高川町の山間部、寒川地区。そんな限界集落にあるたったひとつの
診療所に勤める、たったひとりの気さくな女性医師が主人公のドキュメンタリー。
「この症状やったらここでは見れやんわ。大きい病院行ってもらおか」
「嫌や遠いもん」というような、主人公と患者の診察中のやりとりが微笑ましい。
地域医療の限界や過疎化をテーマに、地方の厳しさを訴えつつも、
そんななかでも笑顔で暮らす、田舎ならではの人の魅力を描いた作品だ。


『埋もれた時限爆弾〜さいたまアスベスト被害』
 2016年/36分/制作 : 武蔵大学社会学部2年 永田浩三ゼミ

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■解説
「久保田ショック」から10年。全国各地でアスベスト被害をめぐる
裁判が始まっている。埼玉県に住む松島恵一さん一家は、
2010年、母・かつ子さんを突然亡くした。かつ子さんはアスベスト
製品をつくる工場内の社宅に暮していた。1枚の写真が残っている。
1962年、アスベスト管の山の横を花嫁姿を見にまとい結婚式場に
向かうかつ子さん。48年後アスベストは牙をむき、中皮腫発症から
2ヶ月でかつ子さんは亡くなった。いま埼玉では工場周辺で中皮腫の
患者が次々見つかっている。学生たちは事実掘り起こしの過程を記録した。
アスベスト問題をわかりやすく伝えた作品で、東京労働安全衛生センターが
制作協力している。

■日時
2016年9月29日(木)
18時30分/開場 19時/開始
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )
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2016年08月05日

第80回ビデオアクト上映会〜スマホの真実〜 報告文

第80回ビデオアクト上映会〜スマホの真実〜
報告:本田孝義

 去る8月3日に「スマホの真実−鉱物紛争と環境破壊とのつながり」(2015年/35分/監督:中井信介)を上映した。折しもポケモンGO!が大騒ぎになっているので、スマホそのものにも関心を持ってもらいたかったが、参加者は約20名と少し寂しかった。

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 この作品はコンゴ民主共和国でタングステンをマスクも付けず人力で掘り出している映像から始まる。ショッキングな映像だ。掘り出されたタングステンはアジアなどで精錬され、スマホのバイブレーターに使われているという。コンゴは1994年に起きたルワンダの戦争に巻き込まれ、2003年には東部に武装勢力が生まれ、彼らがレアメタルなどの鉱物に目を付け資金源とし、紛争が起きるようになった。この紛争では子供も多く殺され、ゴリラも半分殺されたという。こうしたことは日本ではあまり知られていないが、欧米では大問題となり、ヨーロッパでは紛争鉱物を使わない運動が起き、アメリカではレアメタルの原材料の現地調査を義務付ける法律が制定される。こうした動きは全世界に広がり、コンゴの紛争鉱物を買わない動きになっていったが、そのことによって困ったことも起きてきた。コンゴの鉱物の価格が暴落し、採掘で生計を立てていた人たちの生活を圧迫していったのだ。そこで、次の段階としてオランダなどヨーロッパでは、フェアフォンを使う、という動きが出てきた。フェアとはフェアトレードと同じ意味で、紛争鉱物ではないことが証明出来る産地の鉱物を使ったスマホを使う、ということだ。上映後のトークでは、100台ぐらいの小ロットでスマホを作っている工場もある、とのことだった。
 日本が直接関わっている鉱物採掘としてフィリピンの例が紹介される。ニッケルや銅の採掘では森林を破壊し、鉱山周辺では六角クロム、水銀、カドミウムが日本での規制値を超えて検出されている。元々この地に住んでいた先住民族に健康被害が出ている。日本では足尾銅山での公害が知られているが、公害の反省からまがりなりにも環境破壊を起こさないために規制ができたが、その規制値は海外では適用されないことをいいことにこうしてフィリピンで公害を起こしているわけだ。他にエクアドルの事例も紹介される。

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 上映後には製作に関わった田中滋さんと技術に詳しい安田幸弘さんのトーク。田中さんからは現地での撮影の苦労話を。また、こうした海外での鉱物採掘がなかなか日本で知られていないのは、日本ではほとんど鉱物採掘をやっていないから、とのこと。本作は教材向けに作られているので、高校・大学の授業で上映するとショックを受ける学生が多いそうだ。クラウドファンディングで始まったフェアフォンについてもう少し詳しい話もあった。また、安田さんはスマホを分解するワークショップをやっていて、どこまでならスマホを自作できるかを探っているそうだ。そして、フェアフォンを買えばいいというわけではなく、コロコロ機種変更して新しいスマホを買うことのほうが悪い、と安田さんは言われた。(ちなみにフェアフォンはバッテリー、パネルなどが自分で交換できるとのこと)
 会場からの質問では、スマホの多くは中国で作られているが、本作にはほとんど組立工場の話がなかったのはなぜか、とあった。田中さんとしては、取材はなかなか難しいが、出来れば中国の工場の問題を入れた「スマホの真実」の続編を作りたいとのことでした。

■作品ウェブページ(下記から「スマホの真実」のDVDを購入出来ます。)
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/wakeupcall.html

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2016年08月03日

第80回 VIDEO ACT! 上映会 〜スマホの真実〜 

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■ 第80回 VIDEO ACT! 上映会 〜スマホの真実〜 ■

上映作品
『スマホの真実―紛争鉱物と環境破壊とのつながり』(2016年/35分/監督:中井信介)
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2016年8月3日(水)19時より

内閣府発表の消費動向調査によると、普及率が67.4%を越え、
もはや生活必需品となったスマートフォン。通称スマホ。
スマホが製造されるためには、20種類以上の鉱物が必要とされている。
私たちが普段意識していない、スマホに隠された真実とは・・・・?

上映後、制作担当の田中滋さんを交えた、トーク&ディスカッション有。

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【上映作品】
『スマホの真実―紛争鉱物と環境破壊とのつながり 』(2016年/35分/監督:中井信介)
監修/エシカルケータイキャンペーン実行委員会
取材・映像協力/国際環境NGO FoE Japan、環境=文化NGO ナマケモノ倶楽部、Pole Pole Foundation、Fairphone、京都大学霊長類研究所
企画・制作/特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)

■解説
私たちの暮らしになくてはならないものになりつつあるスマートフォンや小型電子機器。
それらをつくるためには20種類以上の鉱物が必要とされています。
中には希少金属、通称「レアメタル」と呼ばれる金属も多く含まれています。
そうした貴重な鉱物を採掘している現場は、一体どんなところなのでしょうか? 
私たちの暮らしをつくっているモノの背景にはどんな採掘行為があるのでしょう?
エクアドル、フィリピン、コンゴ民主共和国の採掘現場を訪れてみると、
そこには目を見張るような環境破壊や鉱山利権を巡った紛争や、
もともとそこに住んでいた人びとの強制的な追い出し、
大規模な環境破壊などが目撃されました。
私たちが日々意識しないスマートフォンの内側に隠された調達の真実に光を当てます。

■作品ウェブページ
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/wakeupcall.html

コンゴ採掘スチルv.jpg

■日時
2016年8月3日(水)
18時30分/開場 19時/開始
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )

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2016年06月11日

【報告文】第79回ビデオアクト上映会〜災害弱者をうまないために〜

上映作品
『逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者』 監督:飯田基晴


 5月26日、「災害弱者をうまないために」と題された79回目のビデオアクト上映会が開催された。上映作品は、『逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者』(監督:飯田基晴)。今年4月に発生した熊本地震のマスコミ報道を見たビデオアクト・スタッフの一人が、「今回も障害者の状況を伝える報道が見当たらない」と感じたことが、開催のきっかけだった。ビデオアクトでは、2012年11月に「何が災害弱者をつくるのか―3.11から見えたこと」と題する上映会を行なっているので、今回は"災害弱者"について考える二度目の会となる。

 災害弱者をうまないためには何が必要か?まずは、障害をもった人々が災害時にどんな困難に見舞われるかを具体的に知ることから始めるべきだろう。『逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者』は、2011年3月11日以降、障害者と彼や彼女らをサポートする人々に何が起こったかを丁寧に描いていた。

 「避難所では生活できない」、「周囲に迷惑をかけるから」と避難をあきらめた人々は家に残ったが、災害支援の情報が届かず、生活は困難を極めた。下半身が不自由な女性は、行き場もなく避難所に逃れたものの、そこにベッドはなく、二週間以上も車椅子に座って眠らざるを得なかった。あからさまに「障害者なんだから避難所ではなく、家に戻れ」と言われた人もいるという。スロープのない仮設住宅に入居した車椅子の女性は、一人で自由に外出することが出来ず、窓際に飛んでくる鳥の姿を見ることで、自らの心を励ましていた…

 「重要なのは障害の重さではなく、当事者が置かれた環境を把握すること」という支援者の言葉が印象的だった。周囲に常にサポートしてくれる家族がいれば何とか越えられる壁であっても、一人暮らしの車椅子生活者にとっては、たった数センチの段差が越えられない大きな壁となる。障害者一人一人、災害時にどのような具体的な支援が必要となるのかを普段からきめ細かく把握しておくことが重要となるのだ。

 では、どうしたら、そのようなきめ細やかな支援体制が築けるのか?上映後のディスカッションで、とても興味深いやりとりがあった。車椅子に乗った参加者の女性が、「こういう作品を一般の健常者の前でやっても、可哀そうね…で終わってしまう。行政の人に観せなければ意味がない」と発言した。それに対して、飯田基晴監督が"自助・共助・公助"という言葉を使って、当事者と行政による支援を社会がどのように繋げていくかを、本作の取材経験をもとに語ってくれた。

 「行政の人に観せなければ意味がない」という意見は、彼女の実体験に基づいた心からの想いだろう。そして、「可哀そうね…で終わってしまう」と思わせてしまったのは、私たち周囲の人間の責任だろう。私たちは、障害当事者が勇気を振り絞って発した「困った。助けて」という"自助"の言葉を想像力を駆使して受け止めなければならない。それが、"共助"に繋がるだろう。そして行政は、"公助"として全ての住民の生命の安全を図る義務があり、それを怠った時は厳しい追及を免れない。

 ディスカッションを聞いて、私はそんなことを思った。約20名の参加者も、各々、何かを持ち帰ってくれたと思う。作品上映とディスカッションのセットは、作品内で描かれた内容を深め、広げてくれるとあらためて思った上映会だった。

(土屋 豊)

★『逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者』は、下記で販売しています。
http://www.j-il.jp/movie/sale.html

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2016年05月26日

第79回 VIDEO ACT! 上映会 〜災害弱者をうまないために〜

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■第79回 VIDEO ACT! 上映会■ 
〜災害弱者をうまないために〜 

上映作品
『逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者 』
(2012年/74分/監督:飯田基晴)
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2016年5月26日(木)19時より

障害があるということは、災害時に普段以上のハンディとなる。
2011年3月11日の東日本大震災、未曾有の大災害の中、
障害を持つ人々に何が起きたのか?

2016年4月、熊本地震が起こり、
9万人以上が避難生活を強いられている。
地震活動期に入った日本は、いつどこで大きな地震が
起きてもおかしくないといわれている。
今あらためて本作を観て、考えたい。

上映後、飯田基晴監督を交えた、トーク&ディスカッション有。

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【上映作品】
『逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者 』(2012年/74分)
監督:飯田基晴 (「あしがらさん」「犬と猫と人間と」)
製作:東北関東大震災障害者救援本部
http://www.j-il.jp/movie/

■解説
障害があるということは、災害時に普段以上のハンディとなる。
2011年3月11日の東日本大震災、未曾有の大災害の中、
障害を持つ人々に何が起きたのか?
福島県を中心に、被災した障害者とそこに関わる人々の証言をまとめた。
 障害ゆえに、地震や津波から身を守れず、
また必要な情報も得られない・・・。
「ここではとても生活できない」「周囲に迷惑をかけるから」と、
多くの障害 者が避難をあきらめざるを得なかった。
そうしたなかで避難所に入った障害者を待ち構えていたのは・・・。
 更には仮設住宅へ入居しても、そこでも大変な不自由が待って
いた。原発事故により市民の姿が消えた避難区域には、取り残さ
れた障害者が不安な日々を送っていた。大震災に翻弄される障害
者と、その実態調査・支援に奔走する人々の、困難の日々。
 住み慣れた土地を追われ、避難先で新たな生活を模索する時、
涙とともに故郷への思いがあふれる。
 マスメディアでは断片的にしか取り上げられない、被災地の障害者
を取り巻くさまざまな課題や問題点が浮かび上がる。

■予告編 
逃げ遅れる人々予告(バリアフリー版)


■日時
2016年5月26日(木)
18時30分/開場 19時/開始
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )




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2016年04月13日

『ニッポン・戦争・私 2015』完成上映会 報告文

2015年11月10日、『ニッポン・戦争・私 2015』の上映会が行われた。

ビデオアクトでは、3分間の動画を募集して応募された全作品を1本につなげて上映するというオムニバス映像企画を、1999年以来数回にわたり行ってきた。

募集された作品は、誰がつくったどんな内容の作品であっても無審査で上映される。だから、観る人にとっては、面白いと思う作品も、退屈だと感じる作品も、考えさせられる作品も、意味不明だと感じる作品も、共感する作品も、稚拙だと捉えられる作品も、全部見せられる事になる。

3分間の作品を一挙に上映するが、次に何が出てくるかはわからない「闇鍋」的な面白さがある。「こんなのは観てられない」と思った作品も3分間ガマンすれば終わって、まったく別の次の作品になる。多彩な視点でつくられた作品を一挙に上映する事で、そこから見えてくるものもある。上映後に感想を聞くと、やはり人によってそれぞれの作品に対する受け止め方は違っている。そんな楽しみ方ができる企画だ。

今回、2年ぶりに行う事にしたのは、安倍内閣による安保関連法案が提出され、スタッフの間にも危機感があったからだ。結果的に多くの人が反対の声を挙げたにもかかわらず、採決とは呼べないような強引な手法で、安保法案は成立した。

応募されて集まった作品は、やはり安保法案に反対する人々の動きを撮影したものも多かった。いま、振り返って観る意義もあるし、無かったことにしてはいけない出来事だろう。

安保法案に関連した作品以外では、劇映画を志している人たちの作品も集まった。社会運動・市民運動に関心があったり参加している人たちだけではなく、こうした幅広い層の人たちに参加してもらえるのも「映像作品の募集」という企画ならではだと思う。

また、自分の肉親の戦争体験などを取材した作品も、いつも以上に多かった。戦争体験を持っている人たちが高齢化し「いま、記録として残しておかねば」と思っている人が少なくないのだろう。

上映後は「観客賞」も決まった。選ばれたのは、青野恵美子さんの『さいごの言葉』という作品だった。社会運動に関心がある人や、ドキュメンタリー系の映像をつくっている人たちにとっては、身につまされる作品だった。

NHKも取材に来ていて番組で紹介された。テレビ局の現場にも、「戦争」や「安保」といった問題をなんらの切り口で紹介したいという想いを持っている人がいるのだと思う。

『ニッポン・戦争・私 2015』に応募された作品群は、DVDとしても頒布されている。上映権付き1000円という価格なので、自由に上映会などを行う事ができる。映像という敷居の低い切り口の接点で、観た人たちどうしで感想を述べ合うなどの使い方もできると思う。
(報告文:小林アツシ)

『ニッポン・戦争・私 2015』DVD.jpg
●DVDの案内はこちら。
http://www.videoact-shop.com/2016/723

●これまでの3分間動画のDVDはこちら。
http://www.videoact-shop.com/?search-class=DB_CustomSearch_Widget-db_customsearch_widget&widget_number=preset-2&cs--0=%E3%83%93%E3%83%87%E3%82%AA%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%88&search=%E6%A4%9C%E7%B4%A2
 

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2016年04月11日

第78回 VIDEO ACT! 上映会〜新田進特集2「沖縄・基地案内」 報告文

3月29日、「新田進特集2『沖縄・基地案内』」と名付けた上映会を行った。昨年の2015年8月に開催した新田さんの特集につづく第2回目。今回は、彼の沖縄取材の集大成的作品といわれる『沖縄・基地案内−未来をみつめ闘う島 』を上映した。参加者は約30名だった。

本作品の監督である新田進さんは、活動家であり、映像作家だった。新田さんは、昨年2014年11月11日、日比谷公園で焼身自死された。公園のベンチには、安倍内閣による集団的自衛権行使容認「7.1」閣議決定と、これらと結びついた沖縄県辺野古と高江の基地建設に対する抗議文が張り付けてあったという。上映会のこの日は、奇しくも安保法施行の日だった。この日の国会前デモには3万7000人(主催者発表)が集まったそうだ。

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『沖縄・基地案内−未来をみつめ闘う島 』は1999年の作品だ。沖縄戦米軍上陸時のアーカイブ映像からはじまり、1995年秋の米兵による少女暴行事件に端を発し、8万5000人が集まり開催された「10.21県民総決起大会」。そして、1999年6月の「米軍用地特別措置法」再改悪へ至る約3年半が記録されている。今となっては貴重な記録である、沖縄県収用委員会公開討論審理での市民の発言や、立ち上がった沖縄の女性たちの「最初は子どもを(デモに)つれて行くのは怖いなと思ったけれど、子どもにも現実を見せることができる。自分にできるはそれしか思いつかなかった」など言葉が胸をうった。また、東富士における自衛隊と米軍の共同実弾射撃訓練の報道規制を伝えるシーンは、2016年現在のニュース映像を見ている気分になった。

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普段、公務員として都内で働いていた新田さん。普段仕事をしながらこれだけの沖縄取材を実行し、映像作品として残していくことは、さぞ大変だったろうなと思う。現在のように、誰もがインターネットで情報を得られる時代じゃない。沖縄で起こっていることを、映像で記録し伝えておく。その熱がじんわりと伝わった。

ところで、今回の上映が決まったのは偶然だった。新田進さんの映像作品を管理している小川町シネクラブから、本作品DVDコピーの依頼を私が受けたのがきっかけだった。コピーを終え、確認のためプレビューしていると、映像の後半部へ進行するにつれて、思わず見入ってしまったのだ。まるで監督の新田さんに「上映してくれ」と頼まれた気がしてきて、慌てて小川町シネクラブへ上映の問合せをした次第だ。上映後、参加できなかった方からも「再度上映を」という問合せをいただいた。上映については小川町シネクラブへお問合せください。

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以下は、ネタバレ注意です。

作品のラストは、集会の舞台発言だ。その言葉は、まるで新田さんの「遺言」のように思えてならないので、
ここに記しておきたい。一坪反戦地主会代表世話人 金城睦弁護士(2014年10月9日ご逝去)の言葉だ。

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「日本という国が、自らの軍隊を持って戦争に参加する。戦争そのものを行うという、大変な曲がり角に到着しています。そのための法律が、こともあろうに国民代表の衆議院ですでに可決され、同じく良識の府といわれる参議院でも間もなく可決されようとしているという情報が、先ほど伝えられました。考えても、考えられないほどの事態ではないでしょうか。そのようなことを日本国民は唯々諾々と許すのでしょうか」

「そういうことをする国会議員は、我々日本国民の代表とは認めたくない。しかし現在、残念ながら我々の力が弱い。弱くても我々は、ずっとやるべきことをやってきた。戦後50年余り、様々な戦争へのたくらみが企てられる中で、世界第2位と言えるほどの大軍隊ができあがっていますけれども、まだ戦争はしていない。これからしようとしているけれども」

「たとえそのための法律ができても、法律という道具があっても、自衛隊という軍隊があっても、国民は、戦争そのものは絶対に許さないという全力を尽くした闘いをするならば、この法律も形骸化することができる。
軍隊を出動させないことが、できるでありましょう。その時々のやるべきことは、とことんやり尽くす。今、生きている人間として」

報告文 土屋トカチ
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2016年03月29日

第78回 VIDEO ACT! 上映会 〜新田進 特集2「沖縄・基地案内」〜

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■ 第78回 VIDEO ACT! 上映会 ■
〜新田進 特集2 「沖縄・基地案内」〜

上映作品『沖縄・基地案内−未来をみつめ闘う島 』(1999年/90分/企画・演出:新田進)
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2016年3月29日(火)19時より

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2014年11月11日、日比谷公園で男性が焼身自死した。
公園のベンチには、安倍内閣による集団的自衛権行使容認「7.1」閣議決定と、
これらと結びついた沖縄県辺野古と高江の基地建設に対する抗議文が張り付けてあった。
男性の名前は、新田進。平和運動・労働運動を積極的に行い、映像作品を数多く残した。

ビデオアクトでは、昨年2015年8月に新田進さんををしのび、
上映会を行った。
今回は、彼の沖縄取材の集大成的作品といわれる
『沖縄・基地案内−未来をみつめ闘う島 』を上映する。

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【上映作品】
『沖縄・基地案内−未来をみつめ闘う島 』(1999年/90分)
企画・演出:新田進
語り: 木内稔
撮影:枝川敏夫・小林明・木嶋正・新開努・新田進
音楽:まよなかしんや (CD 「沖縄ぬけーし風」より「忘ららん」「チビチリガマ」)
編集協力:エムケー企画
協力:違憲共闘会議/反戦地主会/一坪反戦地主会
制作:小川町シネクラブ
http://www.ogawamachicineclub.jpn.org/

■解説
1995年秋の少女暴行事件に端を発し、8万5000人を集めた
「10.21県民総決起大会」の開催から、1999年6月の「米軍
用地特別措置法」再改悪にいたる約3年半を記録。 沖縄県
収用委員会による11回の公開審理と反戦地主へのインタビ
ュー、 沖縄の女性たちの反基地闘争への起ち上がり、 東
富士での実弾射撃訓練抗議行動などを通じて、 反戦地主
を先頭とする沖縄県民あげての<第三の島ぐるみ闘争>を
描き出す。 あわせて、名護サミットの開催と市民投票での
反対の意思表示を覆して強行されようとしている普天間基地
の移転問題の犯罪性を暴き出す。
いま見直すべき、辺野古新基地建設問題を記録した貴重な作品。

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■日時
2016年3月29日(火)
18時30分/開場 19時/開始
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )

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2016年02月02日

第77回 VIDEO ACT! 上映会〜裁判所vsオヤジ〜 報告文

第77回 VIDEO ACT! 上映会〜裁判所vsオヤジ〜 報告文
本田孝義
 
 
 1月28日、“裁判所VSオヤジ”と題して『裁判所前の男』(2015年/65分/監督:松原明 制作:ビデオプレス)を上映した。参加者は約30名。
 まず、私事から始めることをご容赦いただきたい。私は1993年頃から2006年頃まで、よく、裁判の傍聴に行っていた。ある時から、東京地裁前の路上で何やら拡声器で訴えている人をよく見かけるようになった。それが本作の主人公・大高正二さんだった。大高さんは「裁判官は証拠資料をちゃんと読め」「裁判官の数を増やせ」「撮影・録音の自由を」など、ごくまっとうな訴えをされていた。本作の冒頭はこうした大高さんの姿を映している。時期は私が裁判所に行かなくなった2007年の様子だ。

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 不覚にも、それから大高さんに大変なことが起きた、というのは知らなかった。2008年11月、裁判所に録音機を持って入ろうとしたところ、職員に取り囲まれ、職員が勝手に尻餅をついて公務執行妨害で逮捕。(23日間の拘留)。2010年8月10日、ある裁判を傍聴した大高さんは、裁判終了後、警備員に取り囲まれ「所持を禁止した携帯電話を持っていた」として裁判所外に強制退去。この事件で、本作製作者の松原明さんは当事者になってしまった。というのも、大高さんは目をつけられていたこともあり、裁判所に入る前に松原さんに携帯電話を預け、裁判所内で受け取っていたからだ。そして奇妙なことにここで事件は終わらなかった。約3ヶ月後の11月2日、大高さんは公務執行妨害・傷害容疑で逮捕されてしまう。8月10日、裁判所南門から強制退去させられた時に、守衛の頭を門扉越しに殴った、とされたのだ。そんなことが不可能なことは、弁護士が再現して明らかにしている映像が本作中にも出てくる。大高さんは、8月10日の強制退去の際、怪我をしたことから、その後、丸の内署の前で裁判所の暴力を捜査するように訴えていたことから丸の内署が裁判所に被害届けを出させて、11月2日の逮捕になったらしい。
 こうして事件の概要を書くと、大高さんはいかにも反権力の闘士のように思われるかもしれないが、本人は飄々としている。そのギャップがなんとも可笑しい。上映会後の打ち上げでは、もっと大高さんの面白みを膨らませた編集にしてはどうか、という声があったほどだ。

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 2011年5月11日から大高さんの裁判が始まるが、その法廷も異様だった。傍聴者より廷吏が多いような厳重に管理された東京地裁429号警備法廷。法廷で少し文句を言っただけで大高さんも強制退去。
 一体、裁判所は何を恐れているのだろう。本作で浮かび上がってくるのは、裁判所が裁判所の実態を外部の人に知られることを極端に嫌っている、ということだ。裁判は誰でも傍聴ができ、市民に開かれていることが建前だ。市民参加を名目に始まったのが裁判員裁判のはずだった。しかしながら、裁判所内では相変わらず撮影・録音は禁止。オウム裁判が始まった時に導入された金属探知機も、オウム裁判集結後も撤去されていない。朴訥とした大高さんの訴えを聞いていると、裁判所はちゃんと市民と対等に向き合って欲しい、という真っ当なものだということが分かる。
 大高さんが訴えられた裁判も、最高裁まで上告したが棄却されてしまった。

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 上映後、製作者の松原明さん、主人公の大高正二さんを交えて、トークとディスカッションが行われた。映画では十分触れられなかった事件の詳細も補足された。大高さんは最後に、裁判所をどう思ったかを素直に表現して欲しい、と語られたのが印象的だった。国は司法・行政・立法で成り立つが、一般の人に一番馴染みがないのが司法かもしれない。そして一番閉鎖的なのも司法だろう。間違っていると思うことを間違っていると言い続ける大高正二さんの姿を捉えた本作は、そうした閉鎖的な司法に小さな穴を開けることに繋がるに違いない。

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2016年01月28日

第77回VIDEO ACT!上映会 〜裁判所vsオヤジ〜

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■ 第77回 VIDEO ACT! 上映会 ■
〜裁判所vsオヤジ〜
上映作品
『裁判所前の男』(2015年/65分/監督:松原明 制作:ビデオプレス)
http://www.videoact.jp
http://videoact.seesaa.net/
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■2016年1月28日(木)19時より
裁判所批判を続ける大正二さんのドキュメンタリー。
「裁判官は証拠資料をちゃんと読め」「裁判官の数を増やせ」
「撮影・録音の自由を」など、ごくまっとうの訴えを裁判所前で
連日行ってきた大さん。2007年から2013年の7年間を追う。

■解説
『裁判所前の男』(2015年/65分/日本)
監督・撮影・編集:松原明 制作:ビデオプレス
『裁判所前の男』公式ページ 

「裁判官は証拠資料をちゃんと読め」「裁判官の数を増やせ」
「撮影・録音の自由を」など、まっとうな訴えを裁判所前で
連日行ってきた大さんは、裁判所にとって「目の上のタンコブ」だった。
2010年、大さんは裁判所内にカメラ付きケータイを
持ち込んだことを理由に強制退去させられる。
その際、守衛を殴ったという理由で「公務執行妨害、傷害」罪で
逮捕される。本人は事実無根と否定するが、3年近く勾留された。
国家権力が「もの言う人間」をひねりつぶそうとしたのです。
果たしてその事件の真相は?
公判が行われた「恐怖の429号警備法廷」の実態は?
知られることのなかった裁判所の闇が浮かび上がる。

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■日時
2016年1月28日(木)
18時30分/開場 19時/開始
上映後、監督の松原明さんと主人公・大正二さんを交えたトーク&ディスカッション有。
終了予定時刻 20時50分

■上映会場
東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階
東京都新宿区神楽河岸1-1
JR中央線・地下鉄飯田橋駅下車 徒歩1分

■参加費:500円(介助者は無料・予約不要)

■問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
Eメール:jyouei@videoact.jp
(電話:045-228-7996 [ローポジション気付] )

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2015年12月28日

第74回 VIDEO ACT! 上映会〜下北沢の再開発〜報告文

第74回 VIDEO ACT! 上映会〜下北沢の再開発〜報告文
本田孝義

諸般の事情で報告文が掲載されていなかった、第74回 VIDEO ACT! 上映会の報告文を掲載致します。
本年(2015年)3月26日、下北沢の再開発と題して『下北沢で生きる 〜SHIMOKITA 2003-2014〜』(2014年/日本/87分/監督・撮影・編集  斎藤真由美)を上映しました。参加者は約35名。小田急線が地下化され、それに伴い下北沢駅周辺の再開発が進みつつある。本作は、この再開発に反対する人たちの動きや、下北沢への思いを見つめた作品。下北沢といえば、若者の街、演劇・音楽の街として知られるように、本作にも著名な方々が多数登場する。一口に再開発反対、と言っても、その運動は文化運動とも言うべき多彩な広がりを持っていることがわかる。同時に、下北沢の街には昔から店を出している人も多く、そうした人たちがどんな思いで下北沢で暮らしてきたかも描かれる。ドキュメンタリーとして見た場合、少しまとまりに欠けるかな、と思いながら見ていたが、次第にこのまとまりのなさ、様々な要素がごちゃごちゃと絡み合っている事自体が、下北沢という街の雰囲気と合っているように思え、本作の魅力にもなっていることに気づいた。
通常、VIDEO ACT!の上映会では、60分前後で上映し、その後ゆっくり製作者とのディスカッション時間を設けているのだが、本作は上映時間が87分だったので、あまりディスカッションの時間が取れなかった。それでも、短い時間ながら監督の斎藤真由美さんから製作の背景を聞き、観客から質問や感想を聞くことが出来た。

※『下北沢で生きる 〜SHIMOKITA 2003-2014〜』はVIDEO ACT!のweb shopでDVDを販売しています。下記サイトをご覧下さい。
http://www.videoact-shop.com/2014/309

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